エルメス・エディター 「影の色」 杉本博司展

【タイトル】 エルメス・エディター 「影の色」
【アーティスト】 杉本博司
【会期】 2012年11月15日(木)~12月31日(月)
【主催】 エルメスジャポン株式会社

エルメス・エディター、アーティスト・カレは、2008年に発表されたジョセフ・アルバースの《正方形へのオマージュ》にはじまり、2010年にはダニエル・ビュレンヌによる《Photo-souvenirs au carré – カレ:思い出のアルバム》、そして2012年6月には、スイス、アート・バーゼルにて杉本博司による《影の色》が発表されました。今回、エルメス・エディター 《影の色》の日本初公開となる杉本博司展を銀座メゾンエルメス8階フォーラムにて開催いたします。

エルメスが杉本と最初に出会ったのは、2003年、銀座メゾンエルメス8Fのフォーラムでの「歴史の歴史」杉本博司展の時でした。古美術品や古くから伝わる道具を題材として歴史や伝統と向き合い、独創的かつ現代的な表現を模索していく杉本の創作活動は、まさにエルメスの哲学と共鳴するものです。エルメスのジェネラル・アーティスティック・ディレクター、ピエール=アレクシィ・デュマが第3回目のエルメス・エディターに求めたのは、そうした杉本の鋭い視点でした。

2010年、ピエール=アレクシィ・デュマは、杉本の東京のアトリエで、《影の色》プロジェクトを紹介されました。「それを目にしたときのことは今でも鮮明に覚えています。光の降り注ぐ広い空間の中央に、一点の曇りもない限りなく透明なクリスタルのプリズムが、床から天井までまっすぐに、まるで柱のように立っていたのです。それは一種の実験装置であり、まるでアトリエの白い壁に影が落ちるように、プリズムを通った陽光が毎朝、色にあふれた世界をつくりだすのです」とピエール=アレクシィ・デュマは語ります。

杉本はこの刻々と異なる表情を見せるグラデーションを、数年間、几帳面にポラロイドに収めてきました。その光と向き合う時間は杉本が今回エルメスのカレで実現したかった、色彩の本質が見える瞬間そのものでした。

この作品は、色彩の原点を探るもの―つまり、光の分解、分光の獲得、そして色彩が人間の感情に及ぼす影響を分析する、というニュートン、さらにはゲーテの科学的実験にインスピレーションを得たものでした。光のスペクトルという具体的な現象は、杉本によって限りなく抽象的な画像という形で実体化され、高められたといえるでしょう。

杉本博司とピエール=アレクシィ・デュマは、シルクに転写する20枚のポラロイドを選びました。20のパターンはそれぞれ限定エディションで7枚ずつ、合計140枚のカレが140cm x 140cm のサイズで生まれました。

この大判サイズは、ポラロイドという不安定な媒体に記録された色彩の情報を、あますところなく捉えて再現し、色という形のないものに、体とさらなる長い命を与えるために不可欠なものでした。

そしてさらに、繊細で無形のグラデーションを、インクジェットで非常に軽いシルクツイルにプリントすること―新しい技術への挑戦という、エルメス・エディターならではの難題が待ち受けていました。

《影の色》はこのようにして生まれたのです。

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