【PR】ふじのくに⇄せかい演劇祭2017


2017年4月28日より、演劇で世界と静岡をつなぐフェスティバル「ふじのくに⇄せかい演劇祭2017」が静岡芸術劇場のほか静岡市内で開催される。

「ふじのくに⇄せかい演劇祭」は、2011年に「Shizuoka春の芸術祭」の名称を改め、国や地域を越えて、アーティストや観客、地域の人々が直接交流できるイベントとして毎年開催されている。主催の静岡県舞台芸術センター(SPAC)は、専用の劇場や稽古場を拠点に、俳優・舞台技術・制作スタッフが活動を行なう日本で初めての公立文化事業集団。同演劇祭の開催のほか、中高生鑑賞事業や人材育成事業、海外の演劇祭での公演、地域へのアウトリーチ活動に取り組んでいる。ふじのくに⇄せかい演劇祭2017では、国境を越えて広がる「憎悪」に直面し、ギリギリの淵に立つ世界において必要とされるのは、熱狂ではなく、対象と距離をとる冷静さであるというSPAC芸術総監督の宮城聰によるメッセージのもと、今年の第71回アヴィニョン演劇祭のオープニング招待作品としてメイン会場の法王庁中庭での上演が決定したSPAC新作『アンティゴネ 〜時を超える送り火〜』(構成・演出:宮城聰)を含む国内外の7演目を上演する。

オープニングを飾るのは、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を原作に書簡を自撮りのビデオメッセージに置き換え、若者の心に忍び込んだ「病める妄想」を描き出した、ニコラス・シュテーマン演出の『ウェルテル!』。シュテーマンは同じくゲーテを原作とした『ファウストⅠ&Ⅱ』を2011年のベルリン演劇祭で上演し、未来のドイツ演劇の方向性を示す革新的な芸術家に与えられる3sat賞を受賞した(同作の第一部はSPACでも2014年に上演)。昨年は「シャルリー・エブド襲撃事件」を題材にした、エルフリーデ・イェリネクの新作『Wut(憤慨)』の演出を手掛け、さまざまな反響を呼んだ。本作『ウェルテル!』において、シュテーマンは主演のフィリップ・ホーホマイアーとともに、原作が持つ躍動感やリズムを音楽や映像などのメディアを自在に組み合わせた形での変奏を試みている。両者の代表作として知られる本作は、1997年の初演以来、既存のやり方にとらわれず、常に新しい伝え方を探求しつつ、世界各地で1,000 回以上も上演されている。


ニコラス・シュテーマン演出『ウェルテル!』© Samuel Rubio


オマル・アブーサアダ演出『ダマスカス While I Was Waiting』© Didier Nadeau


ジゼル・ヴィエンヌ構成・演出『腹話術師たち、口角泡を飛ばす』© Kerstin Behrendt

『ウェルテル!』と同じく、静岡芸術劇場を舞台に日本初演となるのは、オマル・アブーサアダ演出の『ダマスカス While I Was Waiting』と、ジゼル・ヴィエンヌ構成・演出の『腹話術師たち、口角泡を飛ばす』の二作品。

ダマスカス While I Was Waiting』はシリアの首都・ダマスカスを舞台に、5年前のシリア騒乱では民主主義の勝利を信じて立ち上がった人々が、現在、正反対の状況に直面し追い込まれるなか、それでもなおこの地で生き続けようと葛藤する様を描いている。演出を手掛けるダマスカス出身のオマル・アブーサアダは、政治・社会的問題意識に基づいた作品で国際的に知られ、近年はシリアの伝統と新しい手法を組み合わせた同時代的な脚本や、旅公演などで訪れた中東のさまざまな村の人々との出会いを基にしたドキュメンタリー演劇に取り組んでいる。本作は、同じくダマスカス出身ながら亡命を余儀なくされ、現在はベルリンを拠点とする劇作家のムハンマド・アル=アッタールがアブーサアダとの話し合いを通じて脚本を執筆。ダマスカスの「今」を映像や音を通じて記録しようとする若者とその家族の物語から、ISや難民問題など大手メディアに取り上げられることのない人々の姿はもちろん、シリア社会が根本的に抱える問題に焦点を当てる。

一方、2014年以来の同演劇祭参加となるジゼル・ヴィエンヌは、長きにわたって共同制作を続ける小説家のデニス・クーパー、初の共同制作となるドイツ語圏随一の人形劇団「パペットシアター・ハレ」とともに、ケンタッキー州で毎年実際に開かれている腹話術師の国際会議をモデルとした『腹話術師たち、口角泡を飛ばす』を上演。9組の腹話術師/人形が交わすコミュニケーションの表向きの和やかさと、その背景をなす相互不信とエゴイズムに見られる分裂した人格は、SNS上で交わされるコミュニケーションのみならず、今日の人間関係の在り方を映し出していると言えるだろう。なお、作品ごとにオリジナルの人形を製作することが特徴のひとつとして知られるパペットシアター・ハレは、本上演が劇団の初来日となる。


タニノクロウ作・演出『MOON』Illustration © Casper Pichner

国内の演出家としては、昨年、『地獄谷温泉 無明ノ宿』で岸田國士戯曲賞を受賞したタニノクロウが新作『MOON』を発表する。2011年の『エクスターズ』に続く同演劇祭2度目の参加となるタニノは、2015年の『水の鑑』、昨年の『タニノとドワーフ達によるカントールに捧げるオマージュ』で作品制作をともにし、全幅の信頼を寄せる、カスパー・ピヒナーをプロダクションデザイナーとして招き共同制作を試みる。舞台芸術公園 野外劇場「有度」を舞台に、タニノとピヒナーが創り出す「MOON」に集まる参加者の動くこと全て、感じること全てが時間を作り、物語を作る。それが「奇跡」を生み出すことを信じ、観客と俳優、光や音、空間を結びつけた「場の一体化」に挑戦する。

そのほか、テーブル、椅子、1本のビール瓶のみで構成された舞台空間で、イタリア出身のピッポ・デルボーノが即興的に語り続ける『六月物語』を舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」で日本初演。静岡音楽館AOIと静岡県舞台芸術センターの共同事業として、『1940 -リヒャルト・シュトラウスの家-』を世界初演。東京オリンピックや万博が予定されていた1940年に開催された皇紀2600年祝賀行事に奉祝曲を寄せたリヒャルト・シュトラウスに焦点を当てる。音楽監督を野平一郎(AOI芸術監督)、演出を宮城聰、脚本を大岡淳(SPAC文芸部)が担当した。

チケット購入方法は公式ウェブサイトを参照。前売りチケットの販売は既に始まっており、当日券は残席がある場合のみ各公演会場の受付での販売を予定。『1940 -リヒャルト・シュトラウスの家-』以外の全作品を対象とした演劇祭パスポートは完売しているが、複数の演目の観劇には、年間3回公演の招待などの特典を備えた「SPACの会」への入会も推奨されている。会期中には、「観客とアーティストの出会いの場」をコンセプトとしたコミュニティ・スペース「フェスティバルgarden」「フェスティバルbar」や、静岡市「まちは劇場プロジェクト」との連携事業として、静岡市街の路上を舞台としたストリートシアターフェス「ストレンジシード」など、さまざまな関連プログラムも実施される。

ふじのくに⇄せかい演劇祭2017
2017年4月28日(金)-5月7日(日)
http://www.festival-shizuoka.jp/
会場:静岡芸術劇場、舞台芸術公園、駿府城公園 ほか

上演ラインナップ


ウェルテル!(日本初演)
演出:ニコラス・シュテーマン
4/28(金)、4/29(土)、4/30(日)
会場:静岡芸術劇場


MOON(世界初演)
作・演出:タニノクロウ
4/29(土)、4/30(日)、5/3(水・祝)
会場:舞台芸術公園 野外劇場「有度」


六月物語(日本初演)
構成・演出・出演:ピッポ・デルボーノ
5/1(月)
会場:舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」


ダマスカス While I Was Waiting(日本初演)
演出:オマル・アブーサアダ
5/3(水・祝)、5/4(木・祝)
会場:静岡芸術劇場


ふじのくに野外芸術フェスタ
アンティゴネ〜時を超える送り火〜(世界初演)
構成・演出:宮城聰
5/4(木・祝)、5/5(金・祝)、5/6(土)、5/7(日)
会場:駿府城公園


腹話術師たち、口角泡を飛ばす(日本初演)
構成・演出:ジゼル・ヴィエンヌ
5/6(土)、5/7(日)
会場:静岡芸術劇場


静岡音楽館AOI×SPAC-静岡県舞台芸術センター 共同事業
ふじのくに⇄せかい演劇祭2017連携プログラム
1940 -リヒャルト・シュトラウスの家-(世界初演)
演出:宮城聰
4/29(土)
会場:静岡音楽館AOI・ホール(8階)

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