大和田俊個展 破裂OKひろがり

タイトルの『破裂 OK ひろがり』は元々、インドのトラックやリキシャーの後ろに描かれた“Sound OK Horn”という文言から来ています。インドにはほとんど信号がなく、車同士がクラクションを鳴らしながらその場その場で交通上のコミュニケーションをとっています。その光景を目にして(耳にして?)、局所的に響きわたる音があちこちで連鎖し、空間を広がっていき、中間的な構造を介さずにインド亜大陸の広大なスケールに至る、という音響的なイメージを持ちました。

個々の車を見てみると、“Sound OK Horn”や“Horn OK” “Sound Horn”などのサインが「クラクションを鳴らしてください」という意図で(ほとんど手書きのレタリングで)描かれています。この呼びかけがトリガーとなってクラクションの連鎖を引き起こしているというのも興味深いのですが、“Sound OK Horn”の英語としての不自然さも面白い。

英語としては“Sound Horn Please”あたりが適切なのだと思いますが、街中にあふれるこの不思議な注意書きを見ていると、OKが図像的に中心に来ることで、文法的な繋がりや束縛から離れ、言葉が図像的に散らばっていくように見えてきます。三つの語の間にある空白は文法上のスペースというより、空間的な意味での空白として考えられるのではないかと思っています。

たとえばアマゾン火災によって二酸化炭素が増加し、二酸化炭素が地球規模に充満し、かつ広大な焼け跡ができていること。すこし歴史をさかのぼると、近代に酸素が発見されるまで、空気は「空気の基」と「火の物質」からなると考えられていたということ。局所的に起こっていることが空間を通じて伝播する。それに先立って空気が備えている離散の契機について考えています。(2020/8/9)

 

・展覧会情報

会期:2020年11月28日(土)­ 2021年2月7日(日)

会場:小山市立車屋美術館(栃木県小山市乙女3-10-34)

主催:大和田俊展実行委員会、小山市立車屋美術館

助成:公益財団法人花王芸術・科学財団

協力:間々田乙女土地改良区、PARADISE AIR

後援:朝日新聞社宇都宮支局、FMおーラジ、エフエム栃木、産経新聞社宇都宮支局、下野新聞社、テレビ小山放送、東京新聞宇都宮支局、とちぎテレビ、栃木放送、毎日新聞宇都宮支局、読売新聞社宇都宮支局

担当:中尾英恵(小山市立車屋美術館)

宣伝美術:鈴木哲生

開館時間:09:00~17:00(入館は閉館30分前まで)※敷地内にある小川家住宅の入館は16:00まで

休館日:月(2021年1月11日は開館)、第4金曜日(12月25日、2021年1月22日)年末年始(12月29日〜2021年1月3日)、2021年1月12日

観覧料:一般 400円 / 大学・高校生 250円 / 中学生以下無料

 

 

・大和田俊プロフィール

1985年 栃木県生まれ。現在、東京を拠点に活動。

2010年 東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。

2012年 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。

 

個展

2017年 「Volvo Art Project」ボルボスタジオ青山、東京

2016年 「Paleo – Pacific」トーキョーワンダーサイト本郷、東京

2015年 「unearth」NTT Inter Communication Center、東京

2014年 「dissolution」トーキョーワンダーサイト本郷、東京

 

主なグループ展

2019年 「STAY TUNE / D」Gallery 無量、富山

2019年 「Nemo Biennale」CENTQUATRE、パリ、フランス

2019年 「WRO Biennale」National Museum in Wroclaw、ヴロツワフ、ポーランド

2018年 「BARRAK : survibes Bangkok Biennial ・2018」Whiteline、バンコク、タイ

2018年 「Ars  Electronica 2018」POSTCITY、リンツ、オーストリア

2017年 「不純物と免疫」トーキョーアーツアンドスペース本郷、東京

2017年 「裏声で歌へ」小山市立車屋美術館、栃木

2017年 「BAC Trans Studio Project 1.0」BAC Art Center、パタン、ネパール

2017年 「Malformed Objects」山本現代、東京

2016年 「Sound Reasons Festival」1 Shanti Road、ベンガルール、インド

 

撮影:富田了平

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