EXHIBITION:ジョナサン・モンク “Lenticular LeWitt”


“Lenticular LeWitt” 2018 © Jonathan Monk Courtesy of TARO NASU

ジョナサン・モンク| Jonathan Monk
1969年レスター(イギリス)生まれ。現在はベルリンにて制作活動。
1988年レスター・ポリテクニック(現デュ・モントフォート大学)卒業、1991年グラスゴー美術大学卒業。
主な展覧会に2016年「Exhibit Model One」(Kunsthaus Baselland、Muttenz、スイス)、2015年「All the possible combinations of twelve lights lighting (one at a time)」(Museo d’Arte Contemporanea di Rome、ローマ)、「Anything by the Smiths」(Centre d’art Neuchâtel, ヌーシャテル、スイス)、2014年「Jonathan Monk」(Irish Museum of Modern Art、ダブリン))など。

レンティキュラー・ルイット
Lenticular LeWitt

オマージュ、パスティーシュ、ダブルイメージ、引用、見立て。
諧謔精神あふれる手法によってみずからがヒーローとして敬慕する現代美術の巨匠たちの作品を読みかえ、再構成して、自らの作品にしてしまうジョナサン・モンク。今回、新作の主題としてとりあげたのはアメリカのミニマルアート、コンセプチュアル・アートの先駆者ソル・ルイットによる「100cubes(100個の立方体)」である。

立方体の単純な形を連続的にみせることで視覚的な多彩さを実現するルイットの本シリーズは、複数のペインティングとして存在するのみならず、アーティストブックとしても広くしられている。
2001年、モンクはこのアーティストブックをフリップブック(パラパラ漫画)として16mmフィルムで撮影した。映像のなかでルイットの描いたイメージは、立方体本来の三次元性を取り戻したかのようにみえた….。
この2001年の試みを経て本展でモンクが発表するのは同じ「100 cubes」を撮影した、ただしレンティキュラープリントの写真99点である。

レンティキュラープリントとは、見る角度によって絵柄が動きその結果、立体的な効果を実現する印刷技術のこと。この特殊印刷によって完成された99点の作品を壁にぐるりと横一列に並べる今回の展示では、鑑賞者は会場内を歩きまわることでルイットが描いた立体を三次元的に体験することになる。

三次元の対象物を二次元の視覚世界に封じこめたルイットの偉大な作品、そしてその作品をふたたび本来の三次元世界に解放するモンクのインスタレーション。視覚芸術の根源的な魅力が、二次元と三次元という二つの世界の往還のなかに成立することを熟知しつつ、制作工程の重層性に意味の重層性をもかけあわせた今回の展示は、アートを素材にしてアートを生み出すモンクの個性が色濃く反映された新作個展となるだろう。

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