「線を聴く」展


©Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

【タイトル】 線を聴く
【会期】 2015 年 4 月 24 日(金)~7 月 5 日(日)
    

銀座メゾンエルメス フォーラムでは、シンプルな「線」を考察する展覧会、「線を聴く」展を開催いたします。私たちの想像力の源である自然の中に見出すことのできる線や、線の生まれる場所に焦点をあてた作品をグループ展形式で紹介いたします。

本展覧会は、東京、森美術館にて開催される「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」(2015年4月25日~7月5日、主催:森美術館、ポンピドゥー・センター・メス、特別共催:エルメス財団)に呼応する形で開催されます。

フォルムと同様に「線」の表現は、美術の中でも重要なテーマとして取りあげられてきました。ドローイングやカリグラフィー、あるいは抽象絵画に代表されるように、造形美術において、線についても多くの考察がなされ、作品が作られ続けています。また、私たちの文化のなかでも、科学の分析図や地図、楽譜、文字など、美術を超えた領域でも線を使った描写は広く普及しています。壮大な線をめぐる文化史のなかで、本展覧会は、密やかな線に耳を澄ますきっかけ、また線に導かれるままの開かれた風景を味わう機会となることでしょう。

出展アーティスト
アトリエ・ワン、シュ・ビン、ロジェ・カイヨワ、カールステン・ニコライ、髙田安規子・政子、イグナシオ・ウリアルテ、鯨津朝子、ニエル・トロニ(姓のアルファベット順)

“あちこちに石がみずから書き残したしるしは、それにこだまを返す他のしるしの探索と精神を誘う。 私はこうしたしるしの前に佇み、みつめ、記述する。 そのとき、遊びがはじまる、発明であると同時に認識でもある遊びが。” ロジェ・カイヨワ

自然の中に見出された線から
私たちのインスピレーションの源である自然の中から、アーティストや思想家たちは様々な方法で線を見つけ出します。
『石が描く』で知られるフランスの批評家ロジェ・カイヨワは、好奇心あふれる様々なオブジェの収集を行いましたが、中でも、フランス国立自然史博物館に所蔵されるストーン・コレクションは類まれな美しさにあふれています。「対角線の科学」で、インターディシプリナリーの先駆者といわれるカイヨワの思考は、自然界全般に見られる人智の及ばない普遍的な美が作り出す風景について語ります。200点近いカイヨワのコレクションの中から、今回は瑪瑙(めのう)や大理石を中心に、石の切断面に現れる不思議な線描画を観察します。
東洋では伝統的に自然を絵画のモチーフとし、山水画は中国から日本にかけて発達しました。シュ・ビンのバックグラウンド・ストーリーは一種だまし絵といえる手法で、自然の素材が描き出す風景を紹介します。
ミュージシャンとしての活動も行うカールステン・ニコライは、自然科学の原理やその背後にある構造、また知覚や認識に着眼した作品で知られています。数式によって形成されるグリッドや、線や点のズレによって生じるモアレ現象をリサーチしたヴィジュアルディクショナリーは、私たちが自由に活用できるプラットフォームとして構想されています。

日常生活の中で紡がれる線たちへ
私たちがほとんどの時間を過ごす家やオフィスからも、線は生まれてきます。個人的で親密な時間に編まれた表現や瞬間的なメモ書きのような軽やかさは、私たちの生活空間の中で動いている手が作り上げる線の集積です。
日本人の双子姉妹によるアートユニット髙田安規子・政子は、日常のスケール感を操作することで、思いがけない風景を生み出します。雑誌やトランプ、地図や庭など、普段見慣れた事柄に違和感を持ち込み、私たちを小さな宇宙へと誘います。イグナシオ・ウリアルテは、一般企業にて、会社員として働いていた経歴を持つアーティストです。オフィスという環境の中から始まる小さなアクションを作品への糸口として、A4サイズ紙やBICのボールペン、輪ゴムといった文房具を用いたシンプルな作品が特徴的です。

線未満、出発点
平面表現において線を成す前の段階である点は、全ての出発点でもあります。ニエル・トロニは、西洋美術史の文脈の中で、独自の絵画実践を続けるアーティストです。1966年以来、『仕事-絵画』と呼ばれるその実践は、50番の絵筆を使い、30センチごとの間隔に基づき最初のストロークを描き続けています。

結ばれる線 広がる
ベルリン在住のアーティスト、鯨津朝子は、一貫して線を描くという創作スタイルを25年に渡り続けています。美術館やギャラリーのみならず、住宅などの場所で自在に繰り広げられる作品は、限定された空間からその外へ向かう指向性をもっています。それぞれの空間を読み解きながら、彫刻をするかのように引かれたドローイングは、独自の生命を持った有機体のように、無限に広がります。また、本展覧会では、線にまつわる表現を辿るための、小さなライブラリーも併設します。日本の建築家アトリエ・ワンによる図書館マンガ・ポッドは、直線で作られたグリッドの形態を自在に可変させることで、線の表現やシェルのように閉ざされた空間を作り出します。今回は、マンガ・ポッド エルメスエディションとして、ライブラリーそのものが、自由な形態や思考の回路を生み出すシンボリックなプラットフォームとなります。

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