「ビリジアンの行軍」 小沢さかえ

【タイトル】ビリジアンの行軍
【アーティスト名】小沢さかえ
【期間】2014年7月17日~2014年9月18日

メタモルフォーズには常に過去と未来が混じりあっています。変容の前としての過去、変容の後としての未来。その二つの状態をとらえた一瞬の情景がウィンドウディスプレイのなかに広がっています。

穏やかな秋、静かな室内。どこからともなくざわざわと音が聞こえるかと思うや否や、群れをなした木々の行軍が目の前を覆います。壁紙や窓ガラス、床が青々とした葉と若い枝に変容し、室内をつきぬけるかのようにものすごい繁殖力で空間を埋め尽くしていきます。

人為を超える力を持った自然がもたらすメタモルフォーズ。植物は意思を持って成長し、ウィンドウのありとあらゆる空間を埋め尽くしていきます。そして森の動物たちも引き連れ自然界全体を巻き込む様は、もはや青緑色の洪水。木々がかたどる馬のシルエットを先頭に、ビリジアンの行軍はどこか別の世界へと続いてゆきます。

今回のウィンドウディスプレイを手がけたのは画家の小沢さかえ。独特の色彩と物語性の強い構成を特徴とする小沢の絵画。二次元の絵画の世界が今回はじめて現実の空間に立ち現れます。

うっそうと生い茂る木々の間から覗く視線。壁にかけられた小さな絵画のなかから少女が投げかける視線は、まるで繁茂する木々に対峙するような存在感を放ち、こちらへと突き抜けてきます。やがてビリジアンで覆われようとしている空間のなかで、いずれ起こるかもしれないもう一つのメタモルフォーズを予感させながら。

小沢さかえ
1980年、滋賀県生まれ。2003年京都造形芸術大学芸術学部油画コース 卒業後、ドイツへ渡り一年間の滞在を経た後、ウィーン造形美術大学(Die Akademie der bildenden Künste Wien)に入学、2008年に同校を卒業し帰国。MORI YU GALLERYをはじめ香港、台湾で個展を開催するなど活動の場を広げ、主なグループ展に「絵画の庭―ゼロ年代日本の地平から」(国立国際美術館)や「VOCA展2011」(上野の森美術館)への参加がある。第二回絹谷幸二賞奨励賞受賞。

■過去のウィンドウ・ディスプレイ一覧

Copyrighted Image