「曖昧な関係」展



Courtesy of the artists

会期: 2016年12月21日(水)~2017年2月26日(日)
   月~土曜11:00~20:00 (最終入場19:30)
   日曜 11:00~19:00(最終入場18:30)
   不定休 (エルメス銀座店の営業時間に準ずる。)
   入場無料
会場: 銀座メゾンエルメス フォーラム
   (中央区銀座5-4-1 8階 TEL: 03-3569-3300)
主催: エルメス財団
協力: ギャラリー S O ロンドン、山本現代、ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
後援: 在日スイス大使館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本

銀座メゾンエルメス フォーラムは、世代や国籍、表現方法の異なる3人のアーティストの作品を通して、作品と身体の間に生まれる関係性について考察するグループ展を開催いたします。

スイスのジュエリー作家ベルンハルト・ショービンガーは、身につけることを前提とするジュエリー制作を通じて、身体の物質性、その強さと弱さと欲望を忠実に描き出します。割れたガラスなどのファウンド・オブジェを使ったジュエリーは、自由で大胆不敵なフォルムで我々を誘惑します。愛や権力に結び付けられ、欲望の対象であり続けた装飾品が、身体の不在によって初めてその有用性を謳歌するように、そこには主従の曖昧な反転がみられます。

フランス人の画家、アンヌ・ロール・サクリストは、絵画表現の領域を問い続けています。ルネッサンスの頃、遠近法というテクノロジーを手に入れた絵画は、作者の視点を観客側へと移行させました。その後、カメラの発明や映像表現を経ても、私たちは未だ物理的に画面の中に入ることはできません。カンヴァスの消失点に導かれ佇む両義的で曖昧な場所にこそ、私たちは魅了されつづけているのでしょうか。本展でサクリストは、15世紀にパオロ・ウッチェロが描いた『サン・ロマーノの戦い』に見られる詩的で幾何学的な抽象性を京都の石庭に重ね合わせ、室内と外や、部分と全体の移ろいやすく相対的な関係を浮かび上がらせます。

ベルリン在住のアーティスト、ナイル・ケティングは光波や音波といった不可視のマテリアルをベースに、シグナルや香りといった現象を新しい物質性の感知やコミュニケーションへと置き換えてゆく試みを行います。イタリアの思想家マリオ・ペルニオーラの「エニグマ」を引用しながら、「モノ」化してゆく人間を貫く態度としてパンクカルチャーの「未来のなさ」や「何も感じないこと」に共鳴します。極めて私的なインスタレーションでは、近未来的な身体と物性、そして新たな公共性の知覚を提案します。

作品制作において結ばれる無数の素材とアーティストとの身体的関係は、私的な対話や束縛や支配など、我々の日常生活におけるやり取りとも共通しています。しかし、造形表現において、物質性(マテリアリティ)は作家によって選ばれ、物性(フィジカリティ)として再発見され、制作の過程で相互に刺激しあい、やがて自律し拡張してゆく越境的な関係を紡いでいます。作品と身体の対峙を独自に生成させる3人のアーティストの表現を通じて、オブジェと身体と空間の曖昧な共犯関係をご覧いただきます。

アンヌ・ロール・サクリスト  Anne Laure Sacriste
1970年、フランス・パリ生まれ。米国及びフランスでデザインや美術を修めたのち、1996年にパリ国立高等美術学校を卒業。現在パリ在住。新古典主義などの歴史的な絵画を参照しつつ、現代の「絵画」の在り方を模索している。1999年に山梨県清春にて滞在制作、ニュイ・ブランシュKYOTO2015に参加。主な個展に「Tableaux: Nature Morte, Still Life」(ギャラリー・フリオ・ゴンザレス、アルクイユ、2016年)、「Rideau(x)」(サンマルセル・ド・フェリーヌ城、2014年)、「Reverse Island」(サンテティエンヌ近代美術館、2011年)など。

ベルンハルト・ショービンガー Bernhard Schobinger
1946年、スイス・チューリヒ生まれ。12歳のときにジュエリーアーティストになることを決意。1963年チューリヒ芸術大学を卒業後、金細工職人としての修業を経て、アーティストとしての活動を始める。現在、チューリヒ郊外のリヒタースヴィール在住。技術を誇る工芸としてのジュエリーではなく、記憶やストーリーを持ち、身体的感覚を喚起する、所有者との関係性をつくるジュエリーを制作している。2014〜2015年、個展「Bernhard Schobinger: the Rings of Saturn」が英国、オランダを巡回。日本文化にも造詣が深い。

ナイル・ケティング  Nile Koetting
1989年、神奈川県生まれ。2012年多摩美術大学を卒業し、現在、ドイツ・ベルリン在住。「無機的なもの」と「身体」を水平線上に見る視点から、映像、インスタレーション、サウンドアート、パフォーマンスなどを通して、世界と人間の関係性を問い直すアーティスト。近年の主な展覧会に「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、東京、2016年)、「ホイッスラー」(山本現代、東京、2016年)、「GLOBALE: New Sensorium」(ZKM、カールスルーエ、2016年)。パフォーマーとしてコンスタンツァ・マクラス|ドーキーパークなどのシアター、ダンスカンパニーの作品にも携わる。

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