描かれた未来―3編の建築ドキュメンタリー


写真クレジット: © Kinotar Oy / © ZeLIG – School for documentary / © Joseph Morder

メタモルフォーズ-変身 - 描かれた未来―3編の建築ドキュメンタリー

2014年12月6日~12月28日

12月のテーマは「描かれた未来」。建築物を中心とした3つのメタモルフォーズ。
新しいライフスタイルやレジャーハウスとして構想された『フトゥロ』、シチリア島の未完に終わった都市開発の中でしなやかな日常を作り上げる『未完の地、イタリア』、都市の移り変わりの定点観察といえる『ポンピドゥー・センターの建設』。3つのドキュメンタリーから見えるのは、建設することは常に私たちの欲望の形であったこと、そしてモデルニテ(近代化)の名の下に、私たちが描いた未来の形と時の流れです。

『フトゥロ – 未来への新しいスタンス』
Futuro – A New Stance for Tomorrow by Mika Taanila

1998年/フィンランド/29分/カラー/スーパー16㎜
監督: ミカ・タニラ
撮影: ジェシ・エーロラ
サウンドデザイン: オリ・フウタネン
製作: ラッセ・サーリネン
配給: Kinotar Oy

旧ソ連とアメリカが宇宙開発でしのぎを削った1950~70年代。フィンランドの建築家マッティ・スーロネン設計によるUFO型レジャーハウス「フトゥロ」は、スペースエイジと呼ばれるこの時代を象徴する、フューチャーデザインの金字塔的建築物である。その実験的なコンセプトとデザインは、当時世界中の注目を集め、日本にも数軒が輸出されたが、オイルショック等の影響によりわずか十数件で製造中止となった。
「フトゥロ」の辿った数奇な運命を、フィンランドの若手映像作家、ミカ・タニラが追った歴史的ドキュメンタリー。

『未完の地、イタリア』
Unfinished Italy by Benoit Felici

2011年/イタリア/34分/カラー/HD
監督: ブノワ・フェリシ
撮影: バスティアン・エセ
編集: ミレーナ・ホルツクネヒト
配給: ZeLIG films

廃墟のメッカ、イタリア。「廃墟」とは未完への旅であり、それは第二次世界大戦末期から今日までの、イタリアのもっとも代表的な建築様式をみる場所である。建設半ば、完全と無の間の曖昧な状態に放棄された建物たちは、そのままイタリアの建築風景となった。観客のいないスタジアム、患者のいない病院、未だ初演のない劇場……。
本作品は、イタリアの未完の建物の潜在的な価値と、それらを生活に組み込んでゆく人間の能力に関する研究である。未来はすでに過ぎ去り、「永遠に待つ」現在を生き続けるこれらの廃墟は、我々が時間について思いを巡らせるための招待状となる。

◎モニター上映
『ポンピドゥー・センターの建設』
La construction du Centre Georges-Pompidou by Joseph Morder

1977年/フランス/30分/カラー/スーパー8㎜
監督: ジョセフ・モルデル

5年間に渡るポンピドゥー・センターの工事過程を追ったドキュメンタリー。建物が出来上がる歳月の中で、パリの風景にそぐわないと思われたモダンな建築が少しずつ、街に馴染み、一つの界隈を形成してゆく様がわかる。
建築における近代化について考える貴重な映像。

【関連イベント】特別上映会とトークセッション

I.『ASAHIZA 人間は、どこへ行く』12月13日(土)
II.『ル・コルビュジエの家』12月14日(日)

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