「ガーディアン・エンジェル」 木村太陽

【タイトル】「ガーディアン・エンジェル」
【アーティスト名】木村太陽
【期間】2015年1月21日~2015年3月17日

2015年、エルメスの年間テーマは「フラヌール――いつでも、そぞろ歩き」。フラヌール(Flâneur)とはフランス文化特有の言い回しで遊歩者、つまりあてもなく散策する人という意味です。かつてパリの街を豊かな時間の流れに任せて歩いた芸術家たちは、街の至るところに創造の種を見つけては、彼らの作品に昇華させました。銀座をそぞろ歩く人々の前に現れる今年最初のウィンドウは、現代美術作家の木村太陽が手がけました。

「アイディアを見つけ出すことは厄介なものです。ふとした瞬間に思いつくときもありますし、もっとよいものはないかと一生懸命になると、たちまち消えてしまいます。がんばって方法論もどきを見いだしても、すぐさま通用しなくなることもあります。そのくせ、諦めたとたんにいっぱい思いついたりして、いつの間にかアイディアという世界のなかのフラヌールになっている自分に気がつくことがあります」。

当たり前の日常の中で、自分が存在するということ自体がとても奇妙な現象と感じる瞬間がありませんか?そんなとき、“当たり前の日常”というのは私たちの感覚が麻痺しているにすぎないと気づかされます。二つのウィンドウにはさまれたドアの前に立っている警備員は、この場所に関わる人々にとって「日常」です。木村はそんな警備員の存在を、ウィンドウの中に取り込みました。

「見ることと見られることの間には自然とゲームが生じています。その決め手は必ずしもキングやクイーン(たとえば巨大な絵画や絶世の美女)とは限りません。それは見慣れ過ぎて見えなくなっている曖昧な何かです。警備さんには独特の存在感があります。それは彼らの仕事が見張ることであり、たとえあなたの方を見ていなくても、そこにいるだけでゲームを作り出す存在なのです。ウィンドウディスプレイという『見る/見られる』のゲームの中に、さらに見ることを役割とした存在を組み込むことで、ゲームをいっそう思いもよらぬ展開へと導いていくのです」。

木村太陽 Taiyo Kimura
1970年生まれ。1995年に創形美術学校研究科卒業後、国内外にて活躍。何気ない当たり前の日常生活の中に潜む違和感を見つけ出し、作品の形に昇華させる。ある時は異様、ある時はシュールな木村の作品は、複雑な生理感覚を引き出す笑いや潜在意識の領域にあるような感覚を、観る側の中に徐々に顕在化させ、問題意識を起こさせる。
主な展覧会に「Expo 1: New York」(MoMA PS1、ニューヨーク/2013)、「theatre of the world」(La Maison Rouge Fondation Antoine de Galbert、パリ/2013)、作品の主な収蔵先にKadist Art Foundation(サンフランシスコ)、Nasher Museum of Art at Duke University(ノースカロライナ)などがある。

■過去のウィンドウ・ディスプレイ一覧

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