「市井の山居」 細川 護熙展


【タイトル】 市井の山居
【アーティスト名】 細川護熙
茶室『亜美庵杜』 設計:藤森照信
【会期】 2010年4月22日~7月19日

ポストカードの達磨は永青文庫(※1) にある白隠(※2) の描いた達磨図がモチーフで、油絵を描き始めた最初の作品のひとつです。オリジナルは禅画ですからもちろん水墨ですが、それを油彩で描いたら面白いのでは・・・と思って描いてみたものです。モチーフには、花や景色、静物など、誰もが描くようなものだけではなく、水墨や漆絵で手がけたことのある仏画的なものをやってみたいという思いがかねてからありました。私は焼物でもいろいろな陶仏、五輪塔などを作っていますが、達磨は、何といっても迫力がありますからぜひ油絵として描いてみたかったのです。

油彩を描くにあたっては、セザンヌやモネ、佐伯祐三、須田剋太、梅原龍三郎、安井曽太郎などの絵には好きなものがいくつもあります。ゴッホ、ルオー、ルノアール、ブラマンク、里見勝蔵など内外の多くの画家の画集も、折に触れ見ることがあります。参考になるのは特にタッチです。例えば盛り上がった筋肉などを筆使いで塊ごとに描いていくというようなところですね。構図ももちろん参考になりますが、見るのはやはりタッチです。日本画は平面的な感じがして、私はいまのところ、油絵しか描きません。

絵は自由に描くことができます。でも、やきもの、なかんずく茶碗などになるといろいろ約束事があって、そこだけは押えてつくらなくてはならない。井戸茶碗なら、井戸茶碗の形というものがあって、高さがだいたいどのくらい、高台の高さがどのくらい、梅花皮(かいらぎ)があって、竹節高台があって轆轤目がいくつぐらいとかだいたい決まっています。それに対して、絵はそれぞれの個性で描けます。たとえば、この達磨の髭は墨で描きました。油絵具だと、この髭の擦れた感じが出せないと思ったからです。私も油絵を描きはじめてまだ一年程ですが、そのあたりのところが面白いですね。

※1)永青文庫:戦国時代から続く細川家が所蔵する美術品、歴史資料を研究、保存、一般公開する財団。
※2)白隠(1685-1768):臨済宗を再興した江戸時代中期の禅僧。禅画や書を多数残す。

【細川護熙(ほそかわ もりひろ)】
1938年、東京生まれ。上智大学法学部卒。朝日新聞記者、参議院議員、熊本県知事を経て、1993年内閣総理大臣に就任。六十歳を機に政界を引退。神奈川県湯河原の自邸「不東庵」で作陶のほか、書、水墨、茶杓、漆芸、油彩などを手がける。2001年に初の個展を開催。以来、毎年、日本各地で個展を開く。海外では2003年パリ、2007年ニューヨークにて開催。公益財団法人永青文庫理事長。

プレスカンファレンスインタビュー


■「市井の山居」あれこれ<第一回>油彩と白隠
■「市井の山居」あれこれ<第二回>亜美庵杜
■「市井の山居」あれこれ<第三回>市井の山居と不東庵

<Le Forum>過去の展示一覧 

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