「建築のような、生き物のような」 大西麻貴+百田有希/o+h

【タイトル】「建築のような、生き物のような」
【アーティスト名】 大西麻貴+百田有希/o+h
【期間】 2015年11月18日~2016年1月19日

フラヌールと呼ばれたパリの遊歩者たちは、街を歩きながら、そこかしこで出くわすディテールにインスピレーションを受けて、詩や写真、文学といった芸術作品に転換していきました。俯瞰してみれば、パリという都市を構成する無数の建築それぞれの個性が彼らのインスピレーションのもとになっているとも言えるでしょう。

今回のウィンドウディスプレイを手がけた建築家の大西麻貴と百田有希は、パーソナリティーのある建築、個性に満ち溢れた建築こそ、人々の記憶に強く残ると考えています。たとえば、フランス人建築家のル・コルビュジェがマルセイユに設計した巨大な集合住宅、ユニテ・ダビタシオンは二人にとって建築というよりも、まるで豊満な女性が今にも走り出そうとしているような、生命力に満ち溢れた存在として感じられるのです。

私たちは建築を動かないものだと思っていますが、もし建築が生き物のように街のなかを歩くと考えてみたならば、思わぬ想像が膨らみます。たとえば、眠る街をひそかに徘徊するビル。雲のようにふわふわと浮かぶ屋根。下町を威勢よく練り歩く神輿は文字通り神様のお家ですが、家が町中を動いて回るというだけで、町全体に素晴らしい祝祭性が生まれます。

ウィンドウディスプレイのなかにはそんな自由な想像が詰まっています。小さな建築のようでいて、生き物でもある何か。女性の肩越しに広がるランドスケープのようなかたちは、子供が遊ぶ空間を包み込む温かな屋根になっています。夜になったら銀座のビルの谷間をそぞろ歩くかもしれない、あいまいで自由気ままな小さな建築は、きっと街のいたるところに潜んでいるに違いありません。生命力に溢れる建築を探して、そぞろ歩きをしてみませんか。

大西麻貴+百田有希/o+h onishimaki + hyakudayuki architects / o+h
大西麻貴(1983年生まれ)と百田有希 (1982年生まれ)の共同主宰により、2008年に設立。「千ヶ滝の別荘」にてSDレビュー2007 鹿島賞、「二重螺旋の家」にて新建築賞(2012年)、福智町立図書館・歴史資料館設計業務者選定プロポーザルにて最優秀賞(2015年)を獲得するなど、注目の若手建築家。今回のプロジェクトはチーフデザイナーの栄家志保が担当した。書籍に『大西麻貴+百田有希 建築作品集』田園城市(2012年)、 『8 stories』LIXIL出版 (2014年)等がある。

■過去のウィンドウ・ディスプレイ一覧

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