エルメス ル・ステュディオがセレクトした <パリと職人たち>

2011年2月1日


B. エルメス ル・ステュディオがセレクトした <パリと職人たち>
アレキサンドル・ティケニス 監修 


①パリの小さな仕事 
監督:ピエール・シュナル
フランス/1932/フランス語/モノクロ/16mm/19分
Les petits métiers de Paris by Pierre Chenal

戦前のパリの通りはまだ、どこか別の世紀からやって来たかのような行商人や流しの職人たちでごった返していた。床屋、マットレス製造職人、もぐりの行商人……。物書きや写真家たちにしばしばインスピレーションを与えてきたこれらの人々は、自分の店を構える資格もなければ、余裕もなかった。商売道具を背負ったり、荷車に乗せて引いている彼らの奇妙なシルエット、そして通行人への掛声にピエール・シュナルは魅了された。彼の映画は、決して簡単には撮影を許さない人々の稀少な証言となる。監督は時に彼らを追いかける。なぜなら彼らは何もかも警戒しているから。とりわけ警察を!

1930年代、40年代に活躍した監督、ピエール・シュナル(1904-1990)は主にメロドラマや刑事ものの映画を撮った。長いキャリアの初期に作られたこのドキュメンタリーに監督は「演出用の」短いシークェンスを迷わず挿入し、自身の映像スタイルを打ち出している。彼の画面を切り取るフレーミングのセンスは映画に美しさと詩情を与え、さらに当時すでに消え去ろうとしていた人々への郷愁が加わっている。


②帽子職人
監督:ベルナール・ラスカーズ
フランス/1996/フランス語/カラー/ビデオ/26分
C’est le chapeau qui fait l’homme by Bernard Lascazes

23歳のジェロームは紳士および婦人用帽子職人を志願し、ジャンセル親方の元に弟子入りして3年間の厳しい見習い修行生活を送っている。親方は父親の後を継いだ帽子職人で、舞台やショービジネス向けに「時代物」の帽子を昔ながらの製法で造っている。
「メートル・ダール(名工)」の称号を文化省より贈られた親方は、グランブールヴァールの中心に構える工房で、20世紀末においては稀少財産となった己の技を伝えていく義務を負う。軍人のケピ帽、あるいは海賊の三角帽のコレクションの中から、ジェロームが型紙を作り、フェルトを成型し、厚紙を縫う。だがそこに留まることなく、伝統と革新の融合についても学んでいく。
なるほど確かに帽子が男を作る。将来を信じ、己の情熱を注ぐ道の修行に打ち込む若い男を。
この映画は『L’art et la manière(技と手法)』シリーズの一環として制作された。シリーズのなかでは、それぞれの作品がひとつの工芸を紹介している。


③ダゲール街の人々
監督:アニエス・ヴァルダ 
フランス/1975/フランス語/カラー/35mm/80分
Daguerréotypes by Agnès Varda

原題「Daguerréotypes (ダゲレオタイプ)」は1839年より初期の肖像写真術を次々と発明した男と彼の名を冠したパリの通りに捧げるオマージュである。このダゲール街はアニエス・ヴァルダが暮らし、働く、いわば彼女の庭である。
ヴァルダは隣人と映画作家という二つの視点から、パン屋、時計屋、理髪店を訪ね、ショーウィンドウの裏側で働く姿や、店の奥での親密な空気をフィルムに焼き付けた。何年も前から変わらぬ彼らの職人気質で家族的な商売は、流行には目もくれず、当時パリを変えつつあった近代性とも無縁の存在であるかのように思われる。

1928年生まれのアニエス・ヴァルダはもともと写真家であった。生涯の伴侶であり、何本もの映画を捧げたジャック・ドゥミと同じく、彼女は1950年代末のフランス映画を刷新したヌーヴェル・ヴァーグを同時代人として体験した者の一人である。1955年の処女作「La pointe courte」以来、フィクションとドキュメンタリーを交互に手がけ、しばしば、この二つを彼女なりのユニークで詩的な手法で混ぜ合わせるのを好む。『ダゲール街の人々』で彼女が我々のもとに届けるのは、平凡ながら心を打つ個人的なストーリーで構成された一冊のアルバム、そして日常と過ぎ行く時間、希望と挫折、忘れられた夢についての考察である。