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interview 阪本トクロウ 

2010年12月16日
12/26(日)まで開催中の展覧会「けだるき一日生きるだけ」に際し、制作に関する視点や技法、今後の活動についてなどを阪本トクロウ氏本人に語って頂きました。





アートフロントギャラリー/近藤(以下K)
阪本さんの作品はどこかで見たような、「日常」ということだと思うのですが、どこにでもありそうな風景を描いています。なぜ日常に興味をお持ちなのでしょうか。また、日常は人によって様々ですが、どのような視点でモチーフを選ぶのでしょうか。それは私的なものですか?

阪本トクロウ(以下 阪本)
私には夢の世界を創造することは困難で、「自分にあるもの」で描くということが出発点にあります。
メッセージというものも特に作品には入れず世界を見る「眼」を意識した制作をしています。自分の知っている世界を描くということから自然と日常の中で自分を取り巻くものを描くことになりました。
モチーフを選ぶ基準はどこにでもあるもの。現代の生活の中で作られたもので、都市のルールになっているようなものが多くなります。作られた道を歩き、信号が赤ならば止まり、青ならば進み、標識の通りに曲がるような・・そんな生活から見えるものを描きます。私が実際に見たものを写真に撮って、その形をもとに制作しているので私的なものが最初にあると思いますが人の生活する場所のどこにでもあるようなものなので勝手に他者の記憶に触れるものになるように作っています。


K: 作品によく使われている「呼吸」とはどういうことですか?

阪本: 「呼吸」というタイトルは私の作品の中で日常をテーマにした作品のタイトルに使っています。分かりやすく言い換えると「私が呼吸をして生きている世界」、「私が感じているリアルな世界」、「生きている場所」を描いたものと言えます。なお、「リリイ・シュシュのすべて」という映画の中でリリイ・シュシュが歌っている曲のアルバムタイトルになっていてそこから直接的には言葉を使っています。


K: この展覧会のタイトル、「けだるき一日生きるだけ」についてお聞きします。現実に対してネガティブな気配のあるタイトルであるようにも感じますが、作品を見ているとそのようなこともない気がします。

阪本: 作品はどの作品でもネガティブな面とポジティブな面の両方を入れるつもりで描いています。片方に極端には私は描けませんし、どちらに鑑賞者がとってもらっても良いと思ってます。現実の世界でもどうしようも無く絶望して死にたいくらいなのになんでも無いような日の光が美しく見えてしょうがなかったり、すべてが偽物のハリボテのようなものに見えたり、そのどちらもリアルなものとして見ています。
特に何も起こらず過ぎていく日常の中から永遠を見つけ、自分の輪郭を確かめるような作業になります。いまだに自分が何を表現すれば良いのかわからないですし、いつも自身の中心部分は空っぽで、その「空っぽ」ということがずっとテーマになっています。


K: その中でも森を描いた「バード」や波間を描いたような「地図」という作品は、大多数のモチーフと違う内容の日常ですが、これらは阪本さんにとってどのような作品でしょうか。

阪本: 私の他の多くの作品はなにも描いていない大きなスペースが存在することが多いですが、「バード」や「地図」といったシリーズでは反対に画面全体を覆うように描いてあります。鑑賞者が観たときに頭の中を真っ白にさせるような意図があり、構図の中心もなく視線が画面の中を彷徨うように作っています。
大きなスペースを描いたものも同様の意図もあるのですが、別の形で試してみたのがこの作品群です。同時に私は作品を「地」と「図」のシルエットを使っていつも作っていますが、そのシルエットのみで明快に作品を作ることをいくつかの作品で試してきました。「地図」という作品は飛行機から見えた湿地帯の地面と水面の形で作られており、観る人にはミクロにもマクロにも具象にも抽象にも見えてくるようなものにしました。福田平八郎の描いた「漣」のような明快な形を作ることを心がけました。
世界をどのようにみるのかという視点に興味を持っています。制作しているときはこれらの作品は構図も空間もほとんど考える必要が無く、ただ描くのみです。無心になってただただ描くということを画家としてやりたいという思いもありました。


K: この展覧会の中では、道や鉄塔、信号などが見られます。これまでも何度か拝見したモチーフもありますし、昔よく見たけれど最近はあまり登場しなくなったモチーフもあります。何度も描かれるときはどのような心構えで描いていますか?また描かなくなったモチーフはどうして描かなくなるのでしょうか。

阪本: 1枚作品を作ってそれで終わりということにはならず、その作品の別の可能性があったら何度でも改変した作品を作ることにしています。少しだけ構図の違う作品を同時に作ったり、色を変えてみたり、ぼかしを加えてみたり、バリエーションを増やします。バリエーションを加えながら作った作品が別の作品につながっていくのを期待しています。
描かなくなったモチーフは別のモチーフで他の作品シリーズに移行したために描かなくなったり、現時点で単純にアイデアが浮かばず停止していることもあります。すべての作品はどこかでつながっていなくてはならないと考えています。1点にすべてを懸けるのではなく全体で自分の作品の歴史を作っていくことが重要なことだと考えています。

(次回に続く)