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角文平インタビュー vol.1

2012年1月12日
アートフロントギャラリーでは1月29日(日)まで、角文平個展「NEST」、松本秋則個展「sound scenes 代官山」を同時開催しております。

角文平 - NEST
松本秋則 - Sound Scenes 代官山
会期:1月7日(土)~1月29日(日)
時間:11:00~19:00 月曜休廊
会場:アートフロントギャラリー

角文平は家、クレーン、お土産の大阪城、木彫りの熊など日常の物を組み合わせた作品を制作しています。
今回全3回に渡って先日ギャラリーにて行われた作家へのインタビューを掲載します。
ギャラリーのウェブサイトには、作家のプロフィールや今回の展覧会の展示風景などを掲載しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。
(聞き手/アートフロントギャラリー 近藤俊郎)




近藤(以下、K):大学で最初は物質工学科っていうのところにいらっしゃったというのがすごく印象的だったのですが、物自体、物そのものに興味があったのですか?

角:物質工学科には1年もいっていないくらいなんですが、基本的には新薬を開発するとか、新しい物質を科学的に生み出すというような分野です。分野は違いますが、自分の中ではものづくりというところで共通していて、最初は新しいものを生み出すということに興味を持ってこの分野を学ぼうと考えました。ただ、その先どう進むかという点で疑問を持った時期があって、美術の方を目指すようになったという感じです。
もともと物を作ったり絵を描いたりということはすごく好きだったんですが、田舎だったということもあって、美術の道に進むとかいう概念も全くなく、美術大学の存在自体よく知らなかったようなところもありました。その中で、前の大学に進学して自分の進路について考えた時にやはり美術というものを本格的にやってみたい、と思って東京に来たんです。

K:まずは金属の作品が出てきますが、これはもともと物質として金属に興味があったのですか?

角:そうですね。金属の中でもほとんど鉄なんですが、素材の造形のしやすさ、物質的な変化の仕方に興味を持ったのと、構造体とか重さとか物質的なイメージに惹かれていました。そこで鉄を中心に、実際に使うということではなく表現として発展していったんです。

K:現在も継続しているとは思いますが、始めの頃の作品で工事現場にあるような建築の素材だったり、鉄塔に構造体のようなものが走っていたりと、鉄道や船といった乗り物やクレーンなどの工事現場にある物がモチーフとしてよく見られますね。どちらも重そうな物が動くという点で共通していますが。

角:人間が住まいとか物を作る現場にある重機類が人とは別の生き物に見えるというか。大工さんが家を建てる行為とは違って、全く別の生命体が自分の棲みかを作っているような雰囲気がすごく印象的に見えたんですよね。重機が蠢いて、それが休みの日には完全に止まっているのとか、スケール感がすごく面白くてよく見に行ってしまうんですよ。


「石の下の百足」 2002年 / 鉄・コンクリート / 5600×1000×1600mm

K:初期の作品で「石の下の百足」というものがありますが、これは建築と乗り物が合体した作品ですよね。

角:自分の立っているレベルが地下なのか地上なのか都会だとよくわからなくなるっていう感覚をよく感じていたんです。この作品は地下鉄をイメージしているんですが、都会にいると自分が今地上何階にいるのかとか地下何階にいるのかとかわからなくなるっていうことがよくあって、そこから足の下を走る電車、というイメージで作りました。

K:その作品が2002年のものですが、他にも重機のような作品がいくつかあります。その後2006年には雑誌を固めて作られた「コロコロなるままに」という作品がありますね。ここで何か大きく変化しているような印象を受けますが。


「コロコロなるままに -山寺 #01」 2006年 / コロコロコミック・香炉・FRP / 280×140×140mm

角:この作品はコロコロコミックという雑誌を固めて家を作ったのですが、自分のルーツというか、自分達世代の物を素材にしたいというのがありました。それで僕ら世代はコミック雑誌で育った文化があるので、それを素材に表現しようと思い作ったんです。

K:ここでも建築っていうのは出てきますよね。それまでは重機とか建築素材とかでしたが、今度は建物が出てきています。これは中国の置物であるような重い石のような形をしていますが、こういった重く見える物が軽やかで細い物で支えられているという点は共通しているように思います。例えば先ほどの地下鉄の作品では、重い柱を鉄道が運んでいるとか。このような重さと軽さの関係性はどういったところからきているのでしょうか?

角:石や鉄などの伝統的な素材は使い方によっては重く重厚感があるように見えますが、僕は入口がもともと美術からでなかったというのもあってか、そこに対する既成概念みたいなものをあまり持っていないんですね。そこを意識的にやったというようなところがあります。コミック雑誌の作品では、僕らの世代が軽いとか、そういう風に見られがちだと感じることがあって、それを逆手にとって僕らの世代でしかできない表現や素材の使い方をトラディショナルな風に見せたい、という意識がありました。鉄もオーソドックスなスタイルではなくより違った形で物を支えているとか、重い物を華奢な物で支えるとか、そういったタブーのようなものを覆すイメージで制作しています。

K:それは例えばリチャード・セラが鉄板を棒で支えていたり、アルテ・ポーヴェラの人達が石を壁にとめたりとか、そういった見ていてなんとなく不安になる、緊張感がある、違和感を感じるというような事と共通しているのかもしれませんね。

角:そうですね。

>>>次回、「開催中の展覧会について」に続く