第6号 プリミティブテクノロジー

2010年11月29日
第6号 プリミティブテクノロジー




テクノロジーが社会において果たした役割は語るまでもない。身近なインターネットから、宇宙旅行、バイオテクノロジーまで我々の生活はすべてテクノロジーの発展によってより利便性が増している。
現代美術もそうした社会の一部であるが故、テクノロジーの発展で生まれた新しいメディアを使った作品が次々と出現している。
そこで疑問が生じる。より新しいメディアを使うこと、より高度な技術を使うことは、作品を魅力的にするかもしれないが、そもそもそのメディアを使うことで、作家は何を表現したいのだろう。常に最新のテクノロジーやメディアを使ったら面白い作品ができるのだろうか?

メディアに制限があることによって生まれる面白さがあるかもしれない。もしくはメディアを技術者の想像力を超えて弄ること、それこそが芸術にできるテクノロジーとの対峙方法かもしれない。
そういった観点から今回のART iTは「プリミティブテクノロジー」をテーマに、テクノロジーの技を見せる作品ではなく、異なる観点から可能性を探って制作をしている作家を特集でとりあげる。現在金沢21世紀美術館で日本初の個展が開催されているペーター・フィッシュリとダヴィッド・ヴァイスはテクノロジーから実用性を除外した作品を、また韓国人作家ヤンドゥ・ヂョンは、テクノロジーが生み出すプロセスの不必要性を強調した作品を制作していることが両者のインタビューにより明らかにされる。効率的な手段であるはずのテクノロジーが、逆にプロセスという目的を非効率的に引き延ばすために使われている。

また、テクノロジーと芸術を理解するために、過去に最先端とされた技術を応用した、1950年代の初めに結成された実験工房、また実験工房の中心的なメンバーである山口勝弘についての記事を掲載する。当時最先端と呼ばれたテクノロジーを使っているものの、領域横断的な制作、コミュニケーションの場の創造、さらにテクノロジーに対して批評性を持ちうることで、テクノロジーをデモンストレーションとしてではなく、いわば遊びの道具として用い、作品制作を続けている点が、最先端技術が最先端でなくなった現在でも新しさを持ち続けている理由なのであろう。

いわゆるアニメやCGなどといったメディアの使用やエンターテインメント性を用いて「メディア芸術」を定義することは、こうしたアーティストの表現意図についてはどう考えているのだろう。芸術が生み出す、アーティストが社会や世界を映し出すための道具(メディア)としてテクノロジーが機能しない限り、最先端技術を用いた作品を量産してもそれは芸術としては何ら新しいものを生み出せない、という事実が、それぞれのアーティストの記事を読んで多少なりとも浮かび上がってくるようであれば嬉しく思う。

(文中敬称略)

『ART iT』日本語版編集部




ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス インタビュー
技巧(テクネ)が生むいたずら


ヤンドゥ・ヂョン インタビュー
テクノロジーの非効率的使用法


ビデオ・ウォール・パイク
文/バーバラ・ロンドン


イメージアーカイブ
文/ダン・キャメロン





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文/都築響一



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