2010年記憶に残るもの イエンツ・ホフマン

イエンツ・ホフマンはサンフランシスコのCCAワット・インスティチュート現代美術館のディレクターを務める。2011年にはアドリアーノ・ペドロサとともに第12回イスタンブール・ビエンナーレのキュレーター、彼自身クリストファー・コロンブスの展覧会を企画しているカナリア諸島での第3回目となるビエンナーレのキュレーターを務める予定。加えてメキシコシティのCIACファウンデーションのキュレーターという立場から『Blockbuster: Cinema for Exhibitions』を企画する。また、ニューヨークのインディペンデント・キュレーターズ・インターナショナルが企画する2010、2011年にアメリカの5つの美術館で行われるピープルズ・ビエンナーレをハレル・フレッチャーと共同で企画している。

ART iTはホフマンにこの一年間を振り返ってもらった。

ART iT 2011年に行われる展覧会やイベントで期待しているものはありますか。例えばヴェネツィア・ビエンナーレにはどのような期待をしていますか。もしくは、そうした世界の現代美術を集約した概観という考え方がいまや現代美術が世界で機能している様相とあまりにも食い違っていると思いますか。その一方で回顧展や特定のシーンや時代を掘り下げた展覧会で期待しているものはありますか。

イエンツ・ホフマン(以下、JH) 本当に重要で他とは違うアーティストはほんの僅かしかいません。われわれが世界で目にする大半のものにはおおまかに言ってしまえば、違いがありません。しかし、ある意味ではすべてが広い領域に関連し、高評価を受けなければいけないわけではありません。ヴェネツィア・ビエンナーレはヴェネツィア・ビエンナーレ。いつもそうであるように、いい作品もあればそうでもない作品もある大きな展覧会であるという以上の期待は持っているわけではありません。ヴェネツィア・ビエンナーレがそれ以上のものだったことはありません。より洗練されたものになるには、政治的、構造的、経済的にあまりにも複雑すぎます。楽しみにしている展覧会は9月にロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で行われる『Postmodernism: Style and Subversion 1970-90』展ですね。

ART iT アートを観る、アートについて考える、そしてもちろんアートを制作する上で2011年に新たに生まれてくると思われるテーマはありますか。また、どのような重要な対話が起こることを期待していますか。

JH 2011年に新たな主要テーマや対話が生まれてくるということには疑問を抱いています。まったく新しいものへと移行するには、継続の必要性がある開かれた議論がいくつも残っています。

ART iT 2011年は国際的な現代美術の全体の方向性への理解を変化させる可能性を含んでいると思いますか。2011年は楽観的な年になるのか、それとも不安や内省の年になると思いますか。

JH 毎年、毎月、毎週、毎日がそれぞれわれわれのアートの認識を変える可能性を秘めています。想像力を解き放ち、リスクを恐れずに変化に対してオープンになればいいだけのことです。アートの世界はリスクを冒すことやシステムから抜け出すことを恐れています。未知なるものや失敗の可能性のあるもの、人々が怯える不安定なものを。われわれは常に楽観的かつ懸念を抱くべきです。それこそが前進する方法で、それは批評的多幸感と言っていいでしょう。

ART iT 良いことの前兆はたいてい過去に基づいています。あなたにとって2010年はどのような年でしたか。また、なんらかの特定の分野の研究は行いましたか。

JH これまでに比べて、教育、読書、演劇や映画や文学といった他分野のリサーチに多くの時間を費やすことができ、展覧会を企画するものとして、多大な影響を受けたと思っています。

Copyrighted Image