ニルヴァーナからカタストロフィーへ−松澤宥と虚空間のコミューン @ オオタファインアーツ


展覧会風景:「Utopia & Visions」1971年 Moderna Museet in Stockholm Photo: 松澤久美子

ニルヴァーナからカタストロフィーへ−松澤宥と虚空間のコミューン
2017年3月3日(金)-4月22日(土)
オオタファインアーツ
http://www.otafinearts.com/
開廊時間:11:00-19:00
休廊日:日、月、祝

キュレーター:嶋田美子

オオタファインアーツでは、日本前衛美術の研究者としても活動するアーティスト、嶋田美子のキュレーションのもと、日本におけるコンセプチュアル・アートの先駆的な存在として知られる松澤宥の活動を紹介する資料展『ニルヴァーナからカタストロフィーへ−松澤宥と虚空間のコミューン』を開催する。

松澤宥は1922年長野生まれ。46年に早稲田大学理工学部建築科を卒業すると、諏訪に戻り、以後、2006年に逝去するまで同地を拠点に活動した。40年代より詩作をはじめるが、その後、詩作から美術に転身。55年にウィスコンシン大学にフルブライト交換教授として招聘され、翌年から57年までコロンビア大学で現代美術、宗教哲学を研究する。64年6月1日に「オブジェを消せ」という啓示を受け、6月4日より言葉だけで表現する観念芸術を創始、以後、国内外の展覧会で「人類の消滅」を警告する展示やパフォーマンスを発表していった。第10回日本国際美術展『人間と物質』(1970)、第37回ヴェネツィア・ビエンナーレ(1976)、第14回サンパウロ・ビエンナーレ(1977)などに参加。71年からの10年間にわたって、東京・美学校で「最終美術思考」工房を主宰。95年にはカスヤの森現代美術館初の企画展として『量子芸術宣言』を開催。以降も国外では国際的なコンセプチュアリズム再考の動向とともにクイーンズ美術館などを巡回した『Global Conceptualism: Points of Origin 1950s-1980s』(1999-2000)、ニューヨーク近代美術館の『In & Out of Amsterdam: Travels in Conceptual Art, 1960–1976』(2009)などに出品。国内でも斉藤記念川口現代美術館、東京国立近代美術館、豊田美術館などの展覧会に参加。ヨコハマトリエンナーレ2014では、下諏訪の自宅にある「ψ(プサイ)の部屋」の作品を中心とした展示が行なわれた。

本展では、松澤が最も精力的に活動した69年から73年に時代を絞り、日本における概念芸術の国際展の嚆矢である 『ニルヴァーナ』展(1970)を中心に、その前後における松澤の思考および「フリー・コミューン」の形成を 9 つの資料集合体を年代順に追ってたどっていく。松澤が国内外のアーティストに要請したメールアートなども出品する。

本展のキュレーションを手がける嶋田美子は、昭和天皇が崩御した88年より、女性と戦争をテーマに制作活動を開始。近年は戦争期の女性のみならず、アジア圏における家庭やコミュニティ内における女性の存在の虚実に関するフィールドワークを展開している。制作活動のほか、2013年には美学校を含む1960年オルタナティブ芸術教育に関する展覧会『Anti-Academy』を企画。2015年には「反芸術」や前衛運動に関わり、スウェーデンを拠点に約50年にわたって活動を続ける中島由夫の展覧会を企画。60年代の芸術に関する研究、松澤やヨシダヨシエのアーカイブ整理に取り組んでいる。

メールアート展示予定の作家;
松澤宥、瀧口修造、春原敏之、古沢宅、田中孝道、河口龍夫、ヨシダ・ヨシエ、中村宏、ギルバート&ジョージ、レイ・ジョンソン、リチャード・バリー、ブゼム、ジョン・バルデッサリ、ダグラス・ヒューブラー、ほか多数。

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