リー・キット Not untitled @ シュウゴアーツ


「All Watched Over by Machines of Loving Grace」
installation view at Palais de Tokyo, 2017 copyright the artist courtesy of ShugoArts

リー・キット Not untitled
2017年4月15日(土) – 5月20日(土)
シュウゴアーツ
http://shugoarts.com/
開廊時間:11:00-19:00
休廊日:日・月・祝
※オープニングパーティー:4月15日(土) 16:00-

シュウゴアーツでは、多彩なメディアを横断しながら自身を取り巻く環境や個人的な経験に深く根差した実践を発表しているリー・キット[李傑]による三度目の個展『Not untitled』を開催する。

リー・キットは1978年香港生まれ。台北を拠点にアジア、アメリカ、ヨーロッパの各地で滞在制作を行っている。2013年に香港の The West Kowloon Cultural District(M+)キュレーションによってヴェネチアビエンナーレの香港代表に選ばれ、香港館の室内と中庭を縦横に駆使した自在なインスタレーションが各方面の美術関係者に鮮烈な印象を与えた。昨年、ウォーカーアートセンター(米ミネアポリス)とS.M.A.K.(ベルギーゲント)で同時に個展を開催し、今年はパレ・ド・トーキョー(仏パリ)での展示に始まり、カトマンズやパリでのレジデンスなど、連続性のある展示を多く開催している。

ペインティングやドローイング、プロジェクターやビデオ、家具・什器・日用品などを巧みに用いたリー・キットのインスタレーションからは、絵画という表現を先鋭的に拡張していこうとする意志を常に汲み取ることが出来る。 例えば、リー自身が「hand painted cloth」と呼ぶ一連の初期作品は、布地に描かれた絵画作品を生活の中へ持ち込むことで成立した。カーテンやテーブルクロス、枕カバーなど日々の暮らしに関わるアイテムとして使用されたリーの絵画は、西洋的なコンテキストから逸脱した存在感を示している。 また、自国香港の市民運動への共感から始まり、現在の世界の動きについて、人間的及び政治的な問題意識をもって向き合い続ける彼の生き方こそ、作品の有り様と常に分かち難く結びついている。

2015年、資生堂ギャラリーで開催した個展のタイトル『The voice behind me』は、東京へ来たリーが、この都市に住む人々が無意識の内に誰かの声に支配される欲求を持ち、ある種のヒステリー状態を自ら生み出している状況を推察したことから生まれた。今回も作家は東京に滞在しながら制作を行う。ドラスティックな変化を続ける世界各地の情勢の中で第一線で活躍するアーティストとして、東京で何を感じ考えながら制作するのだろうか。

『Not untitled』(無題ではない)というリー・キット一流の皮肉めいたロジックをもって名付けられた本展覧会では、ギャラリー空間がいくつもの壁によって寸断され、迷路化される。断片化された空間はリーによるプロジェクター絵画によって網をかけられ、縫合され、さらには来場者の影そのものすら作品の一部として取り込まれる。ギャラリー空間そのものがリー・キットのキャンバスと化す、眩暈を起こすような空間になるだろう。


「All Watched Over by Machines of Loving Grace」
installation view at Palais de Tokyo, Paris, 2016 copyright the artist courtesy of ShugoArts

Copyrighted Image