『苦い銭』 監督/ワン・ビン[王兵]


©2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions

『苦い銭』
監督/ワン・ビン[王兵]
2016年|163分|フランス・香港合作
http://www.moviola.jp/nigai-zeni/
2018年2月3日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

ポンピドゥー・センターでの回顧展やドクメンタ14への招聘など、現代美術の領域での注目も高まる映画監督ワン・ビン[王兵]の、出稼ぎ労働者が住民の80%を占める街、中国・湖洲で働く人々を見つめたドキュメンタリー『苦い銭』が、2018年2月3日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開される。同作は、ドキュメンタリーにもかかわらず、2016年の第73回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門で脚本賞を受賞し、同映画祭全出品作の中で人間の権利の重要性を問う最も優れた作品に与えられるヒューマンライツ賞も同時受賞している。

本作『苦い銭』は、雲南省の故郷を離れ、バスと列車を乗り継ぎ、遠く離れた浙江省湖州市織里へと向かう3人の若者の姿を追う場面からはじまる。本作の主な舞台となる浙江省湖州市は、雲南、貴州、江西、安徽、河南各省の農村出身の出稼ぎ労働者が30万人以上暮らし、住民の80%を占める。古くから養蚕が盛んな湖州市のなかでも、1995年に国から町レベルの経済発展モデルのひとつに指定された織里は、この20年来、大きな経済発展を遂げ、おびただしい数の衣類加工工場が集まる「子供服の町」として国際的に知られている。ワン・ビンは、この町に暮らす田舎から初めて街に出て働きはじめる少女、金が稼げず酒に逃げる男、仕事がうまくできずに半ばヤケになって別の工場へ移る青年らを2014年から2015年にかけて撮影(一部は2016年に撮影)。ある被写体から別の被写体へとカメラの前を次々と入れ替わる人物を個人として見つめ、人間関係をつなげる糸を巧妙にたぐる編集によって群像劇を描き出した。


©2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions


©2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions

ワン・ビン[王兵](1967年中国陝西省西安生まれ)は、14歳のときに出稼ぎで働いていた父を亡くし、父の職場だった建設設計院に職を得て、14歳から24歳まで働いた経験を持つ。職場で知り合った建築士らの影響で学問と写真に興味を持ち、瀋陽にある魯迅美術学院写真学科に入学。映像へと関心を移し、卒業後に北京電影学院映像学科に入学し、映画制作を学ぶ。1999年に『鉄西区』の撮影に着手し、2003年に9時間を超えるドキュメンタリーとして完成。同年の山形国際ドキュメンタリー映画祭グランプリをはじめ、リスボンやマルセイユの国際ドキュメンタリー映画祭、ナント三大陸映画祭などで最高賞を獲得する。以来、『鳳鳴-中国の記憶』(2007)や初の長編劇映画『無言歌』(2010)、『三姉妹〜雲南の子』(2012)、『収容病棟』(2013)などを製作し、数々の国際賞を受賞している。また、2017年にはアテネとカッセルの2都市で開かれたドクメンタ14に参加。アテネの国立現代美術館(EMST)では、『苦い銭』と同じく湖州市織里の労働者の1日を15時間にまとめたシングル・チャンネルの映像作品「15 Hours」を発表。カッセルでは、映画館「グロリア・キノ」で、作品資料などとともに、『鉄西区』から『苦い銭』、最新作『ファンさん』(2017)を含む12作品の回顧上映と「15 Hours」の特別上映を行なった。


Wang Bing 15 Hours (2017) at EMST—National Museum of Contemporary Art, Athens, documenta 14. Photo;: ART iT


Wang Bing, installation view of “Wang Bing: Retrospective”, 2017 at Gloria-Kino, Kassel, documenta 14. Photo;: ART iT

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