異郷のモダニズム−満洲写真全史− @ 名古屋市美術館


淵上白陽「列車驀進」1930年(昭和5年)

異郷のモダニズム−満洲写真全史−
前期|2017年4月29日(土・祝)-5月28日(日)
後期|2017年5月30日(火)-6月25日(日)
名古屋市美術館
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/
開館時間:9:30-17:00(金曜は20:00まで ※5/5は17:00まで)
入場は閉館30分前まで
休館日:月

企画:竹葉丈(名古屋市美術館学芸員)

名古屋市美術館では、南満洲鉄道株式会社(満鉄)の設立、「満洲国」の成立から第二次世界大戦の敗戦まで続く植民地支配のもとで展開した写真表現を、貴重なヴィンテージ・プリントや多数の資料で辿る企画展『異郷のモダニズム−満洲写真全史−』を開催する。

日露戦争終結の時点から、「内地」の国民にその存在と意義を知らしめるべく、視覚的な「資料」=写真は宣伝材料として重視された。「満洲」における写真は、「記録」と「表象」、「紹介」と「啓蒙」、さらには「宣伝」へと展開し、正しく、「近代」を記録し続けた写真というメディアの発展を辿ったものと言えよう。本展では、5つに区分された時系列の章立てのもと、これまでにまとまって語られることのなかった、およそ四半世紀の間に展開した「満洲」の写真表現を紹介していく。

第1章は「大陸の風貌-櫻井一郎と〈亞東印画協会〉」と題し、満蒙印画協会(のちの亞東印画協会)の創設者で、同地における写真の撮影から頒布までを一手に担っていた写真家櫻井一郎の活動を中心に、大陸の風景や異民族の生活や風俗、さらには歴史を対象に視覚化していった写真表現を『満蒙印画輯』などの資料を通じて紹介する。第2章「移植された絵画主義-淵上白陽と〈満洲写真作家協会〉」では、櫻井一郎の死後、満蒙宣伝の充実を図るために大連の関係機関が淵上白陽を招聘。彼が創設した「満洲写真作家協会」やグラフ雑誌『満洲グラフ』の創刊など、本格的な満蒙宣伝がはじまる時期を取り上げる。

「「宣伝」と「統制」-満洲國國務院弘報處と『登録写真制度』」と題した第3章では、満鉄によるプロパガンダに代わって抬頭してきた満洲国政府による統制を扱う。満洲国国務院弘報処は〈登録写真制度〉や「優先配給制度」により写真家の翼賛制度を敷いていき、淵上が主導した絵画主義的な表現やモダニズムの実験を否定し、消滅させていく。第4章「“偉大なる建設” -プロパガンダとグラフィズムの諸相」では、名取洋之助が開設した国際報道工芸株式会社の新京支社の刊行物をはじめ、質量ともに全盛を極めた満洲および満洲国の宣伝について、出版されたグラフ雑誌により検証する。さらに第5章「廃墟への「査察」-ポーレー・ミッション・レポート」では、敗戦約1年後の1946年6月にアメリカ合衆国大統領特使エドウィン.W.ポーレーが記録した『ポーレー・ミッション・レポート』から、これまで全く知られていなかった戦後の満洲国都市の情況について紹介する。

会期中には、竹葉丈(名古屋市美術館学芸員)が展覧会の展示構成に沿って、全4回にわたって作品とその時代背景を語る解説会を実施。また、休館日の5月29日(月)に一部展示替えを行なう。

関連企画
解説会
「大陸の風貌−櫻井一郎と〈亞東印画協会〉」
講師:竹葉丈(名古屋市美術館学芸員)
2017年5月6日(土)14:00-
会場:名古屋市美術館2階講堂
定員:180名、入場無料

「移植された絵画主義−淵上白陽と〈満洲写真作家協会〉」
講師:竹葉丈(名古屋市美術館学芸員)
2017年5月27日(土)14:00-
会場:名古屋市美術館2階講堂
定員:180名、入場無料

「宣伝と統制−満洲国の写真政策」
講師:竹葉丈(名古屋市美術館学芸員)
2017年6月3日(土)14:00-
会場:名古屋市美術館2階講堂
定員:180名、入場無料

「建国と崩壊のグラフィズム」
講師:竹葉丈(名古屋市美術館学芸員)
2017年6月17日(土)14:00-
会場:名古屋市美術館2階講堂
定員:180名、入場無料

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