ディアスポラ・ナウ!〜故郷(ワタン)をめぐる現代美術 @ 岐阜県美術館


ミルナ・バーミア「チュートリアル:どのように消えて、イメージとなるか」2015年 ©️2015 Mirna Bamieh

ディアスポラ・ナウ!〜故郷(ワタン)をめぐる現代美術
2017年11月10日(金)-2018年1月8日(月、祝)
岐阜県美術館
http://www.kenbi.pref.gifu.lg.jp/
開館時間:10:00-18:00(第3金曜は20:00まで)入場は閉館30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12/25-1/2)

企画担当:西山恒彦(岐阜県美術館学芸員)

岐阜県美術館では、『ディアスポラ・ナウ!〜故郷(ワタン)をめぐる現代美術』と題し、中東地域にゆかりのあるアーティスト5名とキュンチョメの作品による展覧会を開催する。

古代ギリシャ語に由来する「ディアスポラ」は、「まき散らされたもの」を意味し、離れた地で芽吹きをもたらすことを含んでいたが、第二次世界大戦後、ユダヤ人の「民族離散」の歴史を表現するものとして使用された。現在ではそこから派生し、ほかの民族の離散状況についても用いられている。本展出品作家の多くが関わる中東地域も、紛争や災害により、故郷を追われ、離散する人々が生み出されており、避難民はそれぞれの地に移り住みながらも、故郷への帰属意識を持ち続けている。ディアスポラの問題は、国家の枠組みを超えて、故郷を問い直すことへとつながっていると言えるだろう。


ムニール・ファトゥミ「風はどこから吹いてくる?」2002-16年 ©️2002-16 mounir fatmi

ムニール・ファトゥミは、1970年タンジェ生まれのモロッコ人。現在はパリを拠点に活動している。信仰対象の冒涜、ドグマやイデオロギーの破壊や終焉といったテーマを、多彩な方法を用いて表現する。第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ・チュニジア館、同ビエンナーレ関連企画展のNSK State館の企画展に参加。日本国内でも森美術館の『アフリカ・リミックス:多様化するアフリカの現代美術』(2006)、昨年の瀬戸内国際芸術祭に参加。11月16日からは東京のアートフロントギャラリーでの個展も控えている。

ラリッサ・サンスールは、1973年エルサレム生まれのパレスチナ人。ロンドン、ニューヨーク、コペンハーゲンで学んだのち、現在はロンドンを拠点に活動。サイエンス・フィクションの手法を導入し、社会政治的な問題に言及する作品を制作している。2009年には第11回イスタンブール・ビエンナーレに参加。近年は中東、ヨーロッパの複数の都市で数々の個展を開催している。2011年には広島市現代美術館のビデオアートプログラムA「世界に開かれた映像という窓」にて「スペース・エクソダス」(2009)を上映している。


ラリッサ・サンスール「未来では、彼らは最高級磁器で食事していたことになる」2016年 ©️2016 Larissa Sansour


アクラム・アル=ハラビ「決して忘れない(「チーク」より)」2012年 ©️2012 Akram Al Halabi

アクラム・アル=ハラビは、1981年マジダル・シャムス生まれのシリア人。シリアで美術の専門教育を受けたのち、ウィーンに拠点を移し、美術教育を受けながら制作を行なう。ウィーンを中心にヨーロッパで作品を発表しており、昨年はフランス・メスの文化会館で個展『H E Y』を開催。本展はアル=ハラビにとって日本初の展示となる。出品作「チーク」はシリアから届いた、民衆とその物語のイメージを編集した映像作品となっている。

ランダ・マッダは、1983年マジダル・シャムス生まれのシリア人。パリ郊外とゴラン高原を拠点に制作活動を行なう。制作活動のみならず、パレスチナおよびゴラン高原での展覧会やワークショップの企画にも、アーティスト・グループのメンバーのひとりとして携わっている。近年は国外での発表の機会も増えている。

ミルナ・バーミアは、1983年パレスチナ生まれ。ラマッラーなどパレスチナを拠点に活動する。土地や領域、アイデンティティの問題に直面しながら、絶え間なく変わり続ける政治性について探究している。映像作品や映像インスタレーションを中心とした発表を行なっているが、公共空間でじゃがいもの皮むきをしながら対話を行なうパフォーマンス・プロジェクト「Potato Talks」は、これまでに複数の都市で実施されている。昨年はトーキョーワンダーサイト(現トーキョーアーツアンドスペース)のレジデンスに参加し、今年の4月から7月までトーキョーワンダーサイト渋谷で開催された『7つのトランスフォニー』展で作品を発表した。

キュンチョメは、ホンマエリとナブチが2011年に結成したアートユニット。原発事故や難民問題などにユーモアを交えた介入を試みた作品を発表している。2014年に岡本太郎賞を受賞。昨年は駒込倉庫にて個展『暗闇でこんにちは』を開催。2017年もすでにReborn-Art Festival 2017や黄金町バザール2017で作品を発表している。

本展では、会期2日目にはオープニング・シンポジウムを開催。本展出品作家のほか、『アラブ、祈りとしての文学』などの著書で知られる現代アラブ研究者の岡真理、アラブ思想、文学思想を専門とする岡崎弘樹を登壇者に迎える。そのほか、会期中には、中東の民族舞踊「ダブケ」のパフォーマンスなどを企画している。


キュンチョメ「新しい顔」2015年 ©️2015 KYUN-CHOME

関連イベント
オープニング・シンポジウム
登壇者(予定):アクラム・アル=ハラビ(本展出品作家)
ミルナ・バーミア(本展出品作家)
キュンチョメ(本展出品作家)
岡真理(京都大学教授、アラブ文学)
岡崎弘樹(パリ第三大学アラブ研究科博士課程)
2017年11月11日(土)13:00-
会場:岐阜県美術館 講堂
定員:120名(先着順)
※事前申込不要、要観覧券半券

中東の民族舞踊「ダブケ」パフォーマンス
出演:チーム・ダブケ・ジャパン
2017年12月2日(土)14:00-
会場:岐阜県美術館 講堂(パフォーマンス)、
多目的ホール(ワークショップ)
※事前申込不要、要観覧券半券
※多目的ホールでのワークショップは無料、参加自由

企画担当学芸員によるギャラリーツアー
担当:西山恒彦(岐阜県美術館学芸員)
2017年11月10日(金)14:00-
2017年11月17日(金)18:30-
2017年12月15日(金)18:30-
会場:岐阜県美術館 企画展示室
※事前申込不要、要観覧券半券

※そのほかの関連イベントは公式ウェブサイトを参照

アーティスト・イン・ミュージアム AiM2017
作家:田中彰
2017年10月20日(金)-11月12日(日)、11月17日(金)-12月10日(日)
岐阜県美術館
※11月14日(火)-11月16日(木)は会場調整のため閉場

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