猪熊弦一郎展 戦時下の画業 @ 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

猪熊弦一郎展 戦時下の画業
2017年9月16日(土)-11月30日(木)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
http://www.mimoca.org/
開館時間:10:00-18:00 ただし入館は17:30まで
会期中無休

展覧会担当:古野華奈子(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館学芸員)

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館では、アジア太平洋戦争期の猪熊弦一郎の足跡をたどり、ひとりの画家が戦争とどう向き合い、その画業に戦争がどう影響したのかを検証する展覧会『猪熊弦一郎展 戦時下の画業』を開催している。

開館以来はじめて、猪熊弦一郎の戦時下の画業に焦点をあてた展覧会となる本展は、「戦後70年」を迎えた2015年を機に、戦時下の芸術に対する再検証の機運が高まり、個々の作家の異なる事情や状況をふまえた丁寧な調査・研究が進む流れの一環として考えられる。

猪熊弦一郎(1902-1993)は、パリ遊学中の1939年に第二次世界大戦が勃発し、戦況の悪化に伴い帰国を余儀なくされる。帰国後、41年に文化視察の名目で中国へ、同年12月に太平洋戦争が開戦したのちは、作戦記録画を描く従軍画家として、42年にフィリピン、43年にビルマ(現ミャンマー)と、計3度戦地へ派遣された。

猪熊が軍の委嘱で描いた作戦記録画として、当時の資料から画像が確認できるものは2点。フィリピンのコレヒドールを描いた1点は戦時中に行方知れずとなり、ビルマの泰緬鉄道建設現場を描いた「○○方面鉄道建設」(1944年、東京国立近代美術館所蔵、無期限賃与作品)のみ現存している。ほかには戦争を直接あらわした絵はほとんど残っておらず、一方、従軍先で市井の人々や風景を描いた油彩画、疎開先で描いたデッサンなどは、猪熊の手元に保管されていた。戦後、猪熊は戦争画について、自分の思いを語ることはほとんどなかった。

本展では、上述した横幅約4.5メートルの大作「○○方面鉄道建設」を戦後初公開。そのほか、当時の作品に加え、戦地で撮影した写真、藤田嗣治が戦地から猪熊に送った手紙、書籍、書簡などの資料、また、東京国立近代美術館が所蔵する、当時、猪熊と交流の深かった藤田、同じ戦地に派遣された佐藤敬、小磯良平、伊原宇三郎の作戦記録画を各1点展示する。

また、同地域に関連するものとして、旧制丸亀中学及び新制作派協会において猪熊の後輩にあたる今村俊夫(1945年に戦死)が戦時中に描いた作品1点(期間限定展示9月16日〜10月1日、香川県立ミュージアム所蔵)と、今西中通が高松空襲を描いた作品1点(期間限定展示10月2日〜11月30日、香川県立ミュージアム所蔵)、猪熊自身が戦時中に母校の丸亀高校に寄贈した戦地を描いた作品1点(香川県立丸亀高等学校所蔵)を合わせて展示し、当時の状況を多角的に紹介する。

関連イベント
「猪熊弦一郎展 戦時下の画業」講演会(※10月30日追記)
講師:椹木野衣(美術批評家)
2017年11月12日(日)15:00-
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 3階展示室C
定員:100名(要展覧会チケット、事前申込不要)、無料

「猪熊弦一郎展 戦時下の画業」講演会(※11月13日追記)
講師:満田康弘(KSB瀬戸内海放送 報道クリエイティブユニットタスクマネジャー)
2017年11月19日(日)14:00-
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館3階展示室C
無料(要観覧チケット)、事前申込不要
出品中の猪熊弦一郎の作戦記録画「○○方面鉄道建設」にちなみ、泰緬鉄道を長期に渡り取材しドキュメンタリー映像を制作してきた満田康弘を講師に迎えたスペシャルギャラリートーク。同作の前で、泰緬鉄道について、その戦後処理に半生を捧げた倉敷市の元陸軍通訳・故永瀬隆氏を軸に語る。

同時開催の常設展
猪熊弦一郎展 ニューヨークへ 1955-
2017年9月16日(土)-12月3日(日)

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