マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン 自由のための見世物小屋 @ ワタリウム美術館


マイク・ケリー「ファーム・ガール 課外活動 再構成 #9」2004-2005年 Art © Mike Kelley Foundation for the Arts. All rights reserved/Licensed by VAGA, New York, NY.

マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン 自由のための見世物小屋
2018年1月8日(月・祝)-3月31日(土)
ワタリウム美術館
http://www.watarium.co.jp/
開館時間:11:00-19:00(水曜は21:00まで)
休館日:月(ただし、1/8と2/12は開館)

ワタリウム美術館では、1970年代後半から多種多様な活動を通じて、アメリカ合衆国の大衆文化に潜むさまざまな闇にアプローチし、2012年に他界してなお、国籍、世代、ジャンルを問わず、幅広く影響を与え続けるアーティスト、マイク・ケリーの個展『デイ・イズ・ダーン 自由のための見世物小屋』を開催する。ワタリウム美術館では、今後、複数回の展覧会を通じてケリーのさまざまな作品を紹介していく予定。

マイク・ケリーは1954年にアメリカ合衆国ミシガン州のデトロイト郊外にあるウェインの労働者階級の家庭に生まれる。地元のデトロイト音楽に熱中していたケリーは、ミシガン大学でバンド「デストロイ・オール・モンスターズ」を結成(大学を卒業し、ロサンゼルスに移る76年に脱退)。78年にカリフォルニア芸術大学(カルアーツ)で修士号を取得。80年代より、使い古しのぬいぐるみを使った「Half a Man」シリーズや代表作「More Love Hours Than Can Ever Be Repaid and The Wages of Sin」(1987)をはじめ、大衆文化から素材を選びとり、哲学的、心理学的、美術理論に突き合わせ、大衆文化の中に隠された抑圧されたものを明らかにするような作品を発表していく。88年に第43回ヴェネツィア・ビエンナーレ、92年にはドクメンタ9に参加。翌93年にホイットニー美術館及びロサンゼルス・カウンティ美術館[LACMA]で大規模な回顧展『Catholic』を開催する。95年に代表作「Educational Complex」を制作(2008年にブリュッセルのWIELSにて『Educational Complex Onwards: 1995-2008』を開催)。97年のドクメンタ10では「トニー・アウスラー+マイク・ケリー ポエティクス」を発表し、同年11月に同作品をワタリウム美術館でも発表。99年に「Kandor」プロジェクトを開始。その後も世界各地の数多くの展覧会に参加。制作活動のほか、展覧会のキュレーションや批評活動も精力的に行なっていた。2012年にロサンゼルス近郊の自宅で死去。その後も、企画段階に参加していた『Themes and Variations from 35 Years』(アムステルダム市立美術館、2012)や、ポンピドゥーセンター(2013)やロサンゼルス現代美術館(2014)で個展が開催され。2010年よりロンドンのアートエンジェルの協力のもとで取り組んでいた「Mobile Homestead」がデトロイト現代美術館の敷地内に設置されるなど、ケリーの幅広い活動を紹介する企画が各地で続いている。


マイク・ケリー「母マリアコンテスト 課外活動 再構成 #22」2004-2005年 Photo: Fredrik Nilsen, Art © Mike Kelley Foundation for the Arts. All rights reserved/Licensed by VAGA, New York, NY.

本展では、2005年にロンドンのガゴシアン・ギャラリーで発表して以来、ケリーの代表作のひとつとして知られる「Day is Done(デイ・イズ・ダーン)」(2005)を紹介する。「Day is Done」は、365の映像とインスタレーションとして構成されたシリーズ「Extracurricular Activity Projective Reconstruction」の一部、#2〜#32の総称で、複数メディアからなり、この映像シリーズは、ケリーが通ったすべての学校を組み合わせてつくった彫刻作品「Educational Complex」を舞台としている。建物の中の思い出せない部分を「抑圧された記憶」として未完成のままにし、「Extracurricular Activity Projective Reconstruction」によって、その失われた記憶を埋めるように物語がつくられている。その物語は、ケリー自身の記憶のみならず、アメリカ合衆国の典型的な大衆のイベント、映画や漫画や文学などの記憶にも基づいた「偽りの記憶」によって構築され、個人的なトラウマだけでなく、マイノリティといった社会的な集団のトラウマも表現するものとなっている。

「Day is Done」のほか、ケリーのルーツであるアイルランドの神話から四つ葉のクローバーとそれが表す幸運というモチーフをアイロニカルに表現した「Pansy Metal/Clovered Hoof(女々しいメタル/クローバーの蹄)」(1989/2009)、デヴィッド・アスクヴォルドとのコラボレーション・プロジェクト「ポルターガイスト」の一部で、「Ectoplasm #1-#4(エクトプラズム #1-#4)」(1979)、ミネアポリスの農協のバターのパッケージに描かれたネイティブアメリカンの少女をモチーフとした「Land O’Lakes(ランド・オ・レイクス)」(1996)といった異なる時代の3シリーズを紹介する。


マイク・ケリー「サタンの鼻の穴」〈女々しいメタル/クローバーの蹄〉シリーズより 1989年 Art © Mike Kelley Foundation for the Arts. All rights reserved/Licensed by VAGA, New York, NY.


マイク・ケリー「エクトプラズム#2 外に出るエクトプラズムの幻」〈ポルターガイスト〉シリーズより 1979年 Art © Mike Kelley Foundation for the Arts. All rights reserved/Licensed by VAGA, New York, NY.

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