現代版画の展開 @ 和歌山県立近代美術館


横尾忠則「第6回東京国際版画ビエンナーレ展」1968

現代版画の展開
2017年4月8日(土)- 6月25日(日)
和歌山県立近代美術館
http://www.momaw.jp/
開館時間:9:30 – 17:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし月曜日が祝休日の場合は翌平日休館)

和歌山県立近代美術館では、技術革新により、版画の概念がますます急速に変化していく現在、その現代性がどこに向かうのか、あらためて問い直す展覧会を開催する。

1950年代以降、駒井哲郎棟方志功浜口陽三らの版画作品がサンパウロ・ビエンナーレなど海外の美術展で相次いで入賞し、版画は現代美術の重要なジャンルとして日本でもあらたに注目されるようになった。1957年には東京国際版画ビエンナーレ展が始まり、戦後の日本で初めて国際的な美術選抜展が開催された。1960年代には大衆消費社会を背景にポップ・アートが美術シーンを席巻し、引用・複製されたイメージの表現に版画が多く使われた。そして1970年代になると、コンセプチュアル・アートなど先鋭的な現代美術の作家たちが版画の特質を積極的に表現手法に取り入れ始める。またその頃から現代版画を専門とするギャラリーやコレクターが増え、版画工房が設立され、複数の版画雑誌が創刊されるなど、版画ブームと言われる社会現象まで起きた。

本展では、そうした1950年代から70年代への展開を作品により回顧しつつ、同館が1985年から5回にわたって開催した和歌山版画ビエンナーレ展に入賞した国内作家の作品を見直す。和歌山県ゆかりの美術家として、恩地孝四郎、恩地と共に版画集『月映』を刊行した田中恭吉、日本創作版画協会や日本版画協会で活躍した逸見享硲伊之助、また戦後の国際的な版画展で受賞を重ねた吉田政次浜口陽三村井正誠といった近現代版画史を飾る美術家たちが多くいたことから、同館では版画をコレクションし、和歌山版画ビエンナーレ展を開催した。和歌山版画ビエンナーレ展の特長は、版画の複数性にこだわらずモノタイプの応募を認めたことと、大きさを無制限としたことにより、従来の版画の概念を拡大させる方向に舵を切ったことだったといえる。

版を介し、ある面から別の面にイメージを転移させるという版画固有のメカニズムは、複数の工程を経ることによってしか出来ない表現思考を生み出す。そういった間接性と、オリジナルとコピー(原型と複製)という価値観から離れ、複数のオリジナルの制作が可能となる複数性。作者と鑑賞者の関係にも影響する版画の特質を、近現代版画作品を通して検証する。

出展作家:横尾忠則、恩地孝四郎、浜口陽三、木村秀樹、山本容子、小枝繁昭ほか


山本容子「To the park」1977

同時開催
コレクション展2017-春 + 特集 群像-交錯する声
2017年1月27日(金)-5月7日(日)

コレクション展2017-夏 + 特集 おはなしのなかへ
2017年5月30日(火)- 9月10日(日)

鈴木久雄 彫刻の速度 和歌山展
2017年6月14日(水)-9月10日(日)


恩地孝四郎「フォルム No.14 グロテスク(II)」1952

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