ビルディング・ロマンス @ 豊田市美術館


志賀理江子、タイトル未定、2017年

ビルディング・ロマンス
2018年1月20日(土)-4月8日(日)
豊田市美術館
http://www.museum.toyota.aichi.jp/
開館時間:10:00-17:30 入場は閉館30分前まで
休館日:月

展覧会担当:能勢陽子(豊田市美術館学芸員)
北谷正雄(豊田市美術館学芸員)
鈴木俊晴(豊田市美術館学芸員)

豊田市美術館では、美術のみならず映画や演劇など多方面にわたる領域で活動する作家の作品を通じて、芸術における物語の可能性の再考を試みる企画展『ビルディング・ロマンス』を開催する。

本展タイトルの「ビルディング・ロマンス」とは、19世紀ヨーロッパの成長譚(ビルドゥングス・ロマン)から来た造語。20世紀以降の芸術がロマン派以来の人間的な重さを逃れて純粋な芸術を目指す過程で生み出していった生と切り離された様式とは異なり、本展では、物語という虚構を通してこそ見えてくるこの世界の姿を浮かび上がらせる作品を紹介する。そこで語られるのは、国家や民族を指向した啓蒙主義時代のロマンではなく、家族や恋人、土地など、身近なものとの関わりの中から見出された現代における新たなロマンとなるだろう。

出品作家は、飴屋法水、危口統之と悪魔のしるし、スーザン・ヒラー、志賀理江子、アピチャッポン・ウィーラセタクンの5組。飴屋法水は、唐十郎主催の状況劇場を経て、東京グランギニョル、M.M.M.を結成し、機械と肉体の融合を図る特異な演劇活動を展開。95年に作家活動を停止するも、2005年より活動を再開し、近年はフェスティバルトーキョーや国東半島芸術祭、茨城県北芸術祭に参加するなど、多方面で活動を行なう。危口統之は2008年に悪魔のしるしを結成。本展でも発表する”入らなそうでギリギリ入る”ことのみをコンセプトとした「搬入プロジェクト」や、生演奏を背景に斬られ役を即興で百人切り続ける「百人斬り」をはじめ、演劇、パフォーマンス、建築、美術など多様な要素をもつ作品を、美術、映画、演劇など多方面で発表してきた。2017年の危口の逝去後、悪魔のしるしはその作品をまとめ、危口との対話を続けていくための活動を行なっている。


飴屋法水、2017年(参考写真)


スーザン・ヒラー「Lost and Found」2017年 ©Susan Hiller, Courtesy Lisson Gallery.

スーザン・ヒラーは当初は文化人類学者として活動していたが、美術作家に転身し、1980年代に映像や音響を駆使した作品で評価を得ていく。その後も夢や自動書記、臨死体験などといった文化的事象を、さまざまな表現形式で扱った作品を発表している。2012年に続き昨年のドクメンタ14にも参加し、少数言語を扱った「Lost and Found」(2016)と「The Last Silent Movie」(2007/2008)を発表している。昨年の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での個展も記憶に新しい志賀理江子は、写真を通して自身と社会が交差する接点に生じるイメージの探求を続ける。これまでに発表した写真集『CANARY』や『螺旋海岸』では、地域に眠る現代の民話を周到なリサーチで浮かび上がらせている。本展では、自身の出身地である岡崎市に隣接する豊田市で作品を発表するにあたり、この地で車の製造に関わる人たちが眠る姿を撮影した新作を発表する。

映画、現代美術の両領域で国際的に活躍するアピチャッポン・ウィーラセタクンは、ドキュメンタリーとフィクション、彼岸と此岸を往来する幻想的な映像を、映画や映像インスタレーションのかたちで発表してきた。2015年には光州のアジアン・アート・シアターで初のパフォーマンス作品「Fever Room」も発表し、さらなる表現の可能性を追求している。1999年に山形国際ドキュメンタリー映画祭で短編映画『第三世界』を発表するなど、日本国内では早くから注目され、2016年には『光りの墓』や日本未公開だった『世紀の光』の上映に加え、東京都写真美術館で個展を開催、2017年もTPAMで上述した「Fever Room」を発表している。


アピチャッポン・ウィーラセタクン「ブンミおじさんへの手紙」2009年 ©Apichatpong Weerasethakul, courtesy of Kick the Machine and SCAI THE BATHHOUSE


危口統之と悪魔のしるし「搬入プロジェクト#9 バーゼル/スイス(テアターフェスティバル・バーゼル)」2012年 photo: Simon Baur

関連イベント
パフォーマンス
悪魔のしるし「搬入プロジェクト#22 豊田市美術館」
2018年1月20日(土)14:00-
会場:豊田市美術館庭園〜企画展示室
※当日の観覧券が必要

トーク
志賀理江子「愛知県に産まれ育ち、私が知らなかった沢山のこと」
2018年1月21日(日)14:00-
会場:豊田市美術館講堂
定員:160名(先着順)、無料

パフォーマンス
悪魔のしるし x タートルアイランド「百人斬り」
出演:タートルアイランド、山崎皓司[FAIFAI]ほか、参加者の皆さま
2018年3月18日(日)14:00-
会場:豊田市美術館講堂
定員:160名(先着順)、無料
※「百人斬り」パフォーマンスエキストラ募集(詳細はこちら

対談
飴屋法水(演出家、劇作家、美術家)x 山下澄人(小説家、劇作家、演出家)
2018年4月8日(日)14:00-16:00
会場:豊田市美術館講堂
定員:160名(先着順)、無料

※そのほかの関連企画は公式ウェブサイトを参照

ART iT Archive
アピチャッポン・ウィーラセタクン「森からバンコクの街へ」(2010年8月)
写真は抗う:志賀理江子との一日(文/アヴィーク・セン)(2011年12月)

同時開催
コレクション展
「ビルディング・ロマンス-盲目と洞察」
2018年1月20日(土)-4月8日(日)
出品作品:ソフィ・カル、ライアン・ガンダー、河原温、小泉明郎、高嶺格

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