平成28年度芸術選奨文部科学大臣賞

2017年3月14日、文化庁が芸術各分野における優れた業績、または新生面を開いた芸術家に授賞する芸術選奨文部科学大臣賞の贈呈式が東京都内で開催された。美術部門大臣賞はアーティストの鴻池朋子と鍛金造形家の橋本真之、同部門新人賞は建築家の田根剛が受賞した。

鴻池朋子は1960年秋田県生まれ。絵画、彫刻、映像など、多彩な手法を駆使したインスタレーションで知られる。昨年度の神奈川県民ホールギャラリーに続き、セゾン現代美術館の企画協力のもとに群馬県立近代美術館で個展『根源的暴力Vol.2 あたらしいほね』を開催。「震災を契機に変化した人間と自然との関わり方についての人間の意識を敏感に感じ取り、自然に背く行為でありながら、人間はなぜ、「もの」を創るのかという芸術の根源的な意義について、作品を通じて問い掛けた。これまでの芸術活動の在り方を再構築することによって生み出された作品群は、原初的な魅力を放つとともに芸術の新たな可能性を提示した」と評価された。

橋本真之は1947年埼玉県生まれ。周囲の植栽と呼応しながら増殖、成長する彫刻として、「果実の中の木もれ陽」の制作を85年から継続。今年度は同作品が設置されている埼玉県立近代美術館で公開制作を実施。約40年以上にわたり追求してきた「球状と円筒状形態の不規則な連続が膨張し拡大していく限りなく力強い金属造形」を新たな高みに押し上げ、「たたけば延びる素材の本性と作家の形の意識の融合として造形を捉える、工芸的な造形の本質をこれほど徹底して追求した例はない。それはまた現代美術と工芸を融合する新たな造形の誕生でもある」と評価された。

田根剛は1979年東京都生まれ。2012年には新国立競技場基本構想国際デザイン競技において、最終候補にも選出された。今年度は2006年に設計競技において最優秀賞を獲得したエストニア国立博物館が完成。「ソヴィエト連邦時代の負の遺産である軍用滑走路をそのままモチーフに取り込んだ建築は、シャープでインパクトのある造形により、「過去の記憶の継承」だけでなく、エストニアの「未来への飛翔」を予感させる優れたものである」と評価された。

なお、漫画、アニメーション、エンターテインメントデザイン、メディアアートといった多岐にわたる領域から候補者が挙げられるメディア芸術部門の新人賞は、日産アートアワード2015受賞作家で、平成28年度に東京、台北、ニューヨークの3都市で個展を開催し、8つのグループ展に参加した毛利悠子が受賞した。各部門の受賞者と贈賞理由、選考経過は下記URLよりダウンロード可。

文化庁 平成28年度(第67回)芸術選奨受賞者一覧(PDF):
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/2017030801_besshi.pdf

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