第8回恵比寿映像祭 動いている庭


澤崎賢一「動いている庭」2016年 Photo: Kenichi Sawazaki

2016年2月11日より、現代美術のみならず幅広いジャンルを横断的に紹介するアートと映像のフェスティバル、恵比寿映像祭が開幕する。今年も東京都写真美術館の改修工事に伴い、恵比寿ガーデンプレイス内の複数会場で実施される。

庭師や小説家などさまざまな肩書きを持つ思想家ジル・クレマンは、その著書『動いている庭:谷の底から惑星という庭へ』(訳/山内朋樹、みすず書房、2015)で、「荒れ地とは、人間の力が自然の前に屈したことを示すものだった。けれども違う見かたをしてみればどうだろう?」と問うている。8回目を迎える今回の恵比寿映像祭では、「動いている庭」を出発点に、現代社会を日々変容する庭ととらえ直し、人間中心ではなく、むしろ自然ととおもにつくりあげていく世界像とはどのようなものかを考察していく。

昨年再オープンした恵比寿ガーデンシネマを会場とする上映部門では、昨年急逝した映画監督シャンタル・アケルマンの遺作「No Home Movie」のジャパンプレミア、ジル・クレマンを追ったドキュメンタリー「動いている庭」(監督/澤崎賢一)のワールドプレミア、ベン・ラッセルの「快楽の園」三部作、80年代生まれの作家の作品を中心とした現代中国の映像作品、カンボジア映画黄金期のリー・ブン・イムの「12人姉妹」、リティ・パンの「フランスは我等が故国」、80年代からグローバルサウスの映像作品を中心にさまざまな試みを行なうVideobrasilからの傑作選など、多彩な上映プログラムが組まれている。


Above:シャンタル・アケルマン「No Home Movie」2015年 Photo ©:Doc & Film International.
Below:ジャナーン・アル=アーニ「グラウンド・ワークスⅢ」2013年.

展示部門の中心的な会場となるザ・ガーデンホールでは、ジル・クレマンの思想と活動のパネル展示やロバート・スミッソンの「マンハッタン島を周遊する浮島」(2005)、ロンドンを拠点に活動する数多くの国際展で紹介されているイラン出身のジャナーン・アル=アーニ、上映部門にも出品する中国出身のジョウ・タオ、ネットアートの先駆者として知られるヨアン・ヘームスケルクとディルク・パースマンスのアート・ユニットJODIなどが出品。会期中には多数のラウンジトークを予定している。今回、恵比寿ガーデンプレイスタワー38階の「STUDIO38」を展示会場に追加。オランダで嗅覚アートを教える上田麻希や文化庁メディア芸術祭での受賞経験を持つ藤木淳が展示を行なう。

恵比寿ガーデンプレイスセンター広場では、中谷芙二子がかつて実現できなかった作品の恵比寿ヴァージョン、「霧の庭“ルイジアナのために”」を発表。人工霧を発生させ、環境条件をシミュレートすることで生み出される霧の庭を体験することができる。また、日仏会館ギャラリーでは、代表作「10番目の感傷(点・線・面)」で知られるクワクボリョウタが、本展のテーマに合わせて作成した光と影の新作インスタレーション「風景と映像」を発表する。

会期中には庭と公共性、ランドアート、都市化におけるジェントリフィケーションといった問題を検討するシンポジウムを開催。最終日には、ザ・ガーデンルームにて、フェスティヴァル全体を締めくくるイヴェントを予定。そのほか、恵比寿地域の文化施設やギャラリーで連携プログラムを実施。

第8回恵比寿映像祭
2016年2月11日(木・祝)-2月20日(土)
http://www.yebizo.com
会場:ザ・ガーデンホール、ザ・ガーデンルーム、恵比寿ガーデンシネマ、日仏会館、STUDIO38、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場、ほか
開場時間:10:00-20:00(最終日は18:00まで)
会期中無休


Above:中谷芙二子「潟の太鼓」金沢中央公園 1982年[参考図版] Photo © F.Nakaya.
Below:オリヴァー・レスラー「見えるもの/見えないもの」2014年.

第19回カイエ・デュ・シネマ週間「シャンタル・アケルマン追悼特集」
2016年2月5日(金)-2月14日(日)
アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1602050214/

大阪会場
シネ・ヌーヴォ大阪
2月13日(土)、3月12日(土)-3月18日(金)

京都会場
アンスティチュ・フランセ関西—京都
2月16日(火)
京都シネマ
3月5日(土)-3月11日(金)

横浜会場
東京藝術大学 横浜馬車道校舎
4月初旬予定

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