第20回文化庁メディア芸術祭、受賞作品決定

2017年3月16日、文化庁メディア芸術祭実行委員会は『第20回文化庁メディア芸術祭』の受賞作品を発表した。アート部門の大賞には、デュッセルドルフ出身のラルフ・ベッカーの192個の直流モーターを用いて「構造と行動の関係」を探求するキネティック・インスタレーション「Interface I」が選出された。

文化庁メディア芸術祭は、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において、優れた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会の提供を目的に1997年に設立。受賞作品の展示・上映や、シンポジウムなどの関連イベントを実施する受賞作品展の開催や、メディア芸術分野に貢献した人物の功績を称える功労賞の表彰を行なっている。今年度は世界88の国と地域から4,034点(アート部門は2,204点)に及ぶ作品の応募があり、各部門の審査を通じて、受賞作品(大賞・優秀賞・新人賞)を選出した。アート部門の審査員を務めたのは、石田尚志(画家/映像作家/多摩美術大学准教授)、佐藤守弘(視覚文化研究者/京都精華大学教授)、中ザワヒデキ(美術家)、藤本由紀夫(アーティスト)、森山朋絵(メディアアートキュレーター/東京都現代美術館学芸員)の5名。

ラルフ・ベッカーは1977年デュッセルドルフ生まれ。基礎的メカニズムやテクノロジーが社会に与える影響の研究を行なう。ケルン大学(1999-2001)、ケルン・メディア芸術大学(2002-2007)、ベルリン芸術大学(2014-2016)で学び、現在はブレーメン芸術大学で新技術による実験デザイン分野の教授を務める。昨年はカッセルのクンストフェラインにて個展を開催。数多くのメディアアートの展覧会に参加、アルス・エレクトロニカでの二度の佳作受賞(2012、2015)など高い評価を受けている。
受賞作品の「Interface I」は、現代におけるテクノロジーの物理的な存在や複雑なシステム、物質と思考の相互作用についての長期にわたる研究と考察の結果として制作された。ベッカーは同作品の核となるアイディアを「ノイズを邪魔なものとして捉えるのではなく、変化と新しい視点を可能にする触媒として理解するというもの」と語り、「今ある技術原理と放棄され忘れられた方法、理論、材料とを結びつけることに挑戦し」、「この研究を、異なる時期や文化にまたがる技術的にハイブリッドな作品にこれからつなげていきたい」と受賞を受けてのコメントとして発表した。


第20回文化庁メディア芸術祭 アート部門大賞 『Interface I』 Ralf BAECKER © 2016 Ralf Baecker

受賞作品の作品概要、贈賞理由は公式ウェブサイトの受賞一覧(PDF)に掲載。例年は11月末に受賞作品の発表、2月に受賞作品展を開催していたが、第20回文化庁メディア芸術祭は受賞作品の発表時期、展覧会開催時期を変更。贈呈式・受賞作品展は2017年9月にNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]と東京オペラシティ アートギャラリーの2カ所で実施される予定。

文化庁メディア芸術祭http://j-mediaarts.jp/

アート部門
大賞|ラルフ・ベッカー「Interface I」
優秀賞|吉原悠博「培養都市」
「Alter」制作チーム(代表:石黒浩/池上高志)「Alter」
ベンヤミン・マウス / プロコップ・バルトニチェク「Jller」
オリ・エリサル「The Living Language Project」
新人賞|津田道子「あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。」
ローサ・メンクマン「DCT: SYPHONING. The 1000000th interval.」
ニナ・クルテラ「The Wall」

エンターテインメント部門
大賞|庵野秀明/樋口真嗣「シン・ゴジラ」

アニメーション部門
大賞|新海誠「君の名は。」

マンガ部門
大賞|石塚真一「BLUE GIANT」

功労賞
飯塚正夫(コンテンツ・マネージャー)
梯郁太郎(電子楽器開発音)
高野行央(昭和漫画館青虫館長)
松武秀樹(作曲家/編曲家/シンセサイザー・プログラマー)

Copyrighted Image