第33回写真の町東川賞


本橋成一「炭鉱〈ヤマ〉/鞍手、福岡」1965年

2017年5月1日、「写真の町」として知られる北海道上川郡東川町は、第33回写真の町東川賞の受賞者を発表した。

北海道・東川町は、1985年6月1日に「写真の町」を宣言。以来、毎年夏に「東川町国際写真フェスティバル」を開催するとともに、「写真の町東川賞」を通じて、これからの時代をつくっていく優れた写真作家(作品)を表彰している。近年はより多くの有識者からのノミネートを目的に推薦者リストの拡充を進めており、今年は海外作家賞21人、国内作家賞48人、新人作家賞62人、特別作家賞22人、飛彈野数右衛門賞26人の計179人がノミネートされた。各賞の審査は、浅葉克己(アートディレクター)、上野修(写真評論家)、北野謙(写真家)、楠本亜紀(写真評論家、キュレーター)、中村征夫(写真家)、丹羽晴美(学芸員、写真論)、平野啓一郎(作家)、光田由里(美術評論家)の8人が務めた。

国内作家賞は、60年代から現在にいたるまで、社会の基底にある人間の営みを写真や映像に収めてきた本橋成一が受賞。昨年は初期未発表作から最新作まで代表作を含む9シリーズをまとめた写真集『在り処』を発表。同名の回顧展をIZU PHOTO MUSEUMで開催した。その一貫した丹念な仕事、時を経てますます意義深いものとなるモノクロームの表現を高く評価されての受賞となった。


野村佐紀子 Left:黒闇」シリーズより Right:「もうひとつの黒闇」シリーズより

新人作家賞は野村佐紀子が受賞。『黒闇』シリーズなどの先行するイメージを使い、ソラリゼーションで制作した『もうひとつの黒闇』を発表。写真集では、黒い紙に黒のインクで印刷するという試みに挑戦。野村はその独自の身体表現と繊細なまなざしが評価され、国内作家賞候補に挙がっていたが、本作の実験性に満ちた試みが、新人作家賞により適しているものという判断により同賞の受賞となった。

ポーランドが対象国となった今回の海外作家賞は、アンナ・オルオーヴスカが受賞。オルオーヴスカは日常における「見えないもの」をテーマに、現実とイリュージョンの境目に隠れた意味や無意識、怖れ、ファンタジーなどを探る作品を制作している。近年のシリーズ「Effortless exercise」(2016-)は、写真の表面にパラフィンを塗ることで、温度の変化によって下の画像が現れてくるという、写真の可視性を問う作品となっている。


アンナ・オルオーヴスカ「Erotyk 2,3」2016年


岡田敦「ユルリ島の野生馬」シリーズより、2011年-

また、特別作家賞には一昨年に写真集『1999』(ナガトモ、2015)を発表し、2011年より北海道根室市からの委託により、根室半島沖に浮かぶ無人島・ユルリ島に生息する野生馬の撮影を続ける岡田敦が受賞。「長年にわたり地域の人・自然・文化などを撮り続け、地域に対する貢献が認められる者」を対象とした飛彈野数右衛門賞には、千葉県横芝町を拠点に九十九里浜の生活・文化を撮り続けた小関与四郎が受賞。小関はこれまでに『九十九里浜』(木耳社、1972)や『成田国際空港』(木耳社、1982)、『九十九里浜』(春風社、2004)、『国鉄・蒸気機関区の記録』(アーカイブス出版編集部、2007)などを発表している。


小関与四郎「堀川浜(野栄町)暖をとるオッペシたち」『九十九里浜』より、1963年頃

なお、第33回東川町国際写真フェスティバルは、受賞作家作品展の会場となる東川町文化ギャラリーを中心に、7月25日から8月30日まで開催。授賞式は受賞作家作品展初日の7月29日に東川町農村環境改善センター・大ホールで行なわれる。翌30日には、各賞受賞者や審査委員、ゲストを交えたフォーラムを開催する。会期前後および会期中には、ワークショーップや各種写真展などさまざまなイベントが実施される。

第33回東川町国際写真フェスティバル
2017年7月25日(火)-8月30日(日)
http://photo-town.jp/
会場:東川町文化ギャラリー
開場時間:10:00-17:30(7/29は15:00-21:00、8/30は15:00まで)
会期中無休

Copyrighted Image