第28回高松宮殿下記念世界文化賞


シンディ・シャーマン「アンタイトルド #571」2016年、ニューヨーク、メトロ・ピクチャーズの展示会で 2016年 Courtesy of the artist and Metro Pictures

 

2016年9月13日、公益財団法人日本美術協会は、国内外問わず優れた芸術家を顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞の受賞者を、日本プレスセンタービル10階ホール(東京・内幸町)をはじめ、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ローマ、ベルリンの各都市で発表した。絵画部門のシンディ・シャーマン、彫刻部門のアネット・メサジェを含む各部門の受賞者には、明治記念館(東京・元赤坂)で10月18日に開催される授賞式典にて、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1,500万円が贈呈される。

絵画部門を受賞したのはシンディ・シャーマン(1954年アメリカ合衆国ニュージャージー州生まれ)。70年代後半に映画やテレビ番組などに登場する女性を自ら演じた写真作品「アンタイトルド・フィルム・スティル」を発表。以来、映画やテレビ、雑誌などメディアに登場する有名、無名の女性像に扮した写真作品を中心に発表している。99年にはハッセルブラッド国際写真賞を受賞。2012年にはニューヨーク近代美術館で大規模な回顧展を開催。昨年はオペラ史に残るソプラノ歌手、マリア・カラスが使用した衣装をまとい、オペラ映画『プリマドンナ』(監督/フランチェスコ・ヴェッツォーニ)に出演。国内では、96年に東京都現代美術館で個展を開催している。

彫刻部門はアネット・メサジェ(1943年フランス・ベルク・シュル・メール生まれ)が受賞。日用品を蒐集した「コレクション」シリーズをはじめ、収集、刺繍、モノとの戯れ、言葉遊びといった行為を通じて、無邪気かつ残酷な物語世界を醸し出す作品を発表している。2000年以降はデジタル技術も積極的に取り入れた作品をドクメンタ11などで発表。通算3度出場したヴェネツィア・ビエンナーレでは2005年にフランス館代表として参加し、金獅子賞を受賞した。2007年に回顧展『アネット・メサジェ:使者たち』を開催。ポンピドゥー・センターを皮切りに世界各地を巡回。2008年には森美術館でも大規模個展を開催した。
ART iT Interview Archive アネット・メサジェ「表徴の女王」

 


アネット・メサジェ「禁止事項」2014年、額装された68枚の絵、色鉛筆、15体の布製人形 Courtesy of Annette Messager and Marian Goodman Gallery Photo: Marc Domage

 

建築部門を受賞したパウロ・メンデス・ダ・ホッシャは1928年ブラジル・エスピリトサント州ヴィトーリア出身生まれ。ブラジル出身者による高松宮殿下記念世界文化賞受賞は、2004年に同部門で受賞したオスカー・ニーマイヤー以来2人目。ニーマイヤーと並び、ブラジルを代表する建築家として知られ、2000年にはミース・ファン・デル・ローエ賞、2006年にはプリツカー賞を受賞している。ブファンタ近郊の「自邸」(1960)、「ブラジル彫刻美術館」(1988)、「サンパウロ州立美術館」(改修、1993)など、手掛けた建築のほとんどがサンパウロに集中しているが、昨年はブラジル以外で初めての大規模建築として、リスボンの「国立馬車博物館」を手掛けた。今年の第15回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で金獅子賞を受賞。また、日本国内では、70年の大阪万博でブラジル館の設計を担当していた。なお、メンデス・ダ・ホッシャの主要12作品をドローイングや模型、テキスト、写真で紹介する展覧会『パウロ・メンデス・ダ・ローシャ展』が、東京・千駄ケ谷のGA galleryで開催される。(9月24日-11月6日※会期中無休)

そのほか、音楽部門は世界有数のヴァイオリニスト・ギドン・クレーメル(1947年ラトビア・リガ生まれ)が受賞。演劇・映像部門は、『タクシードライバー』(1976)や『アフター・アワーズ』(1986)、『ディパーテッド』(2007)などで知られる映画監督マーティン・スコセッシ(1942年ニューヨーク生まれ)が受賞。遠藤周作の原作を映画化した新作映画『沈黙』が今秋公開予定。(日本国内の上映は来年初めの予定)

 


若手芸術家奨励制度:ファイブ・アーツ・センター(マレーシア)『10月作戦』2008年 Part of the Emergency Festival、Courtesy of Five Arts Centre

 

なお、本日合わせて発表された第20回若手芸術家奨励制度の対象団体には、マレーシアで多彩で広範囲な芸術活動を展開しながら、地域社会を刺激、若手アーティストを支援してきたファイブ・アーツ・センターが選出され、奨励金500万円が授与された。同センターは、1984年に故クリシェン・ジット、チン・サン・スーイ、マリオン・ドゥ・クルーズが結成。現在は世代、分野の異なる13人が所属している。最年少メンバーのマーク・テは来月開催のKYOTO EXPERIMENTの参加アーティストのひとり。

授賞式典は明治記念館(東京・元赤坂)で10月18日に開催。また、毎年恒例の建築部門受賞者による記念講演会は10月19日に鹿島KIビル大会議室で開催される。

 

絵画部門:シンディ・シャーマン
彫刻部門:アネット・メサジェ
建築部門:パウロ・メンデス・ダ・ホッシャ
音楽部門:ギドン・クレーメル
演劇・映像部門:マーティン・スコセッシ
若手芸術家奨励制度対象団体:ファイブ・アーツ・センター(マレーシア)

 

高松宮殿下記念世界文化賞http://www.praemiumimperiale.org/

 


パウロ・メンデス・ダ・ホッシャ「サンパウロ州立美術館」1993年 ブラジル・サンパウロ

 

関連企画
受賞記念建築講演会2016「パウロ・メンデス・ダ・ホッシャ」
2016年10月19日(水)16:00-17:30(開場:15:30)
会場:鹿島KIビル 大会議室(東京都港区赤坂6-5-30)
定員:300名(要予約)
申込等詳細は下記ウェブサイトを参照。応募締切は9月26日。

カタカナ表記は主催者資料に基づく。

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