「帰心の会」による震災復興シンポジウム開催

2011年5月1日、東日本大震災からの復興へ向けて、建築家ができることを考えるため結成された「帰心の会」による震災復興シンポジウムが伊東建築塾にて行われた。会員は山本理顕、内藤廣、隈研吾、妹島和世、伊東豊雄の5名の建築家。

伊東による結成の挨拶に続き、内藤を司会に各建築家が現地で考えたことや震災以後の取り組み、この状況下において建築家が為すべきことをそれぞれの立場から語った。妹島は人と自然との関係性を改めて問い直し、隈は人の欲望と建築が結びつくところに経済が回るという前提の再考の必要性を語り、山本は仮設住宅の配置や体育館での実現可能性のある具体的なアプローチを提案。伊東は今回のスタンスとして、批判をしないこと、身近なことから行動を起こすこと、「私」を越えたところで何ができるかを発表し、内藤は土木業界の初動の速さなど現実的な側面に触れながらも、すべての人が避けることのできない「ゆるやかな死」について考える必要性を述べた。このように、5人が統一の見解を持つというよりも「私」を越えて、これからの建築の可能性を模索していく姿勢が見受けられた。

会場からは東日本大震災における建築家による復興支援ネットワーク「アーキエイド」の発起人、小野田泰明や福屋粧子が東北の実情を報告し、伊東らの下の世代にあたる塚本由晴や小嶋一浩による厳しい意見も寄せられ、世代を超えた議論の場としての可能性が伺えた。また、ユーゴスラビア出身のダルコ・ラドヴィッチはユーゴスラビア紛争と比較しつつ、人間の傲慢さについて語り、そのほか、構造設計、建築評論、脳外科などの分野からの発言もみられた。会場に集まった多数の建築関係者の中には石上純也や藤村龍至などの若手建築家の姿も見受けられた。

5月27日にはアーキエイドの企画により、帰心の会の第2回目のシンポジウムがせんだいメディアテークにて開催される予定。できるだけ多くの人、若い世代とのオープンな議論の場となることが期待される。

(文中敬称略)

伊東建築塾:http://www.itoschool.or.jp/
アーキエイド:http://archiaid.org/

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