2014年ハッセルブラッド国際写真賞、石内都が受賞

2014年3月6日、ハッセルブラッド財団は2014年ハッセルブラッド国際写真賞の石内都への授賞を発表し、東京都内のスウェーデン大使公邸で授賞式を開催した。賞金は100万スウェーデンクローナ(約1600万円)。

石内都は1947年群馬県生まれ。自身が育った横須賀を舞台とした「横須賀ストーリー」(1976-77)で注目されると、「アパートメント」(1977-78)、「連夜の街」(1978-1980)と続く三部作により、同地の文脈を間接的かつ詩的に写し取り、1979年に木村伊兵衛写真賞を受賞。男性優位の写真界の文脈の中で女性写真家の存在を示した。90年代に入るとそれまでとは異なるアプローチで、皮膚に刻まれた傷跡を記録した『scars』(1991-2003)、そして女性の身体に残る傷に対象を絞った『INNOCENCE』(1994-2007)の制作し、2005年にはヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表として参加。母親の残した遺品の記録『Mother’s』(2000-2005)を発表している。その後も、現在も制作過程である『ひろしま』(2007-)では、原爆後に遺品として保存されていた品物を記録。最新シリーズの『絹の夢』(2009-2012)では、日本の絹織物産業の歴史、着物のもつ意味合い、自身の生まれ故郷に言及。個の視点を失うことなく、記憶の政治的問題に取り組んでいる。

1980年に創設された同賞は、偉大な業績をあげた写真家に贈られる。今回の受賞者選考委員会は、FOAM芸術部門副館長(アムステルダム)のマルセル・フェイルを委員長のほか、テート・モダンのキュレーター、サイモン・ベーカーら5名で構成された。

受賞した石内の個展が11月7日からハッセルブラッドセンター(ヨーテボリ)で開催され、同日にはセミナーも予定されている。また、受賞を記念した写真集も刊行される。

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