第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ「栄誉金獅子賞」


El Anatsui

2015年4月23日、ヴェネツィア・ビエンナーレ評議会は第56回ヴェネツィア・ビエンナーレのディレクターを務めるオクウィ・エンヴェゾーの推薦のもと、現代アフリカ美術を代表する彫刻家のエル・アナツイに生涯にわたる功績を讃える「栄誉金獅子賞」を、シカゴ大学のルネッサンスソサエティで40年近くディレクターを務めたスザンヌ・ゲッツに「芸術貢献特別金獅子賞」を授賞する旨を発表した。なお、授賞式は5月9日に開催される第56回ヴェネツィア・ビエンナーレのオープニングにて行なわれる。

エル・アナツイは1944年ヴォルタ州アニャコ(ガーナ)生まれ。クマシのンクルマ科学技術大学で木彫の制作をはじめ、75年にンスカのナイジェリア大学で教職を得ると、現在に至るまで同地を拠点に制作活動を続けている。初期の木彫やセラミックの作品にはガーナの染色布(アジンクラ)やナイジェリアの伝統的な装飾文様(ウリ)などの影響が見られる。90年にヴェネツィア・ビエンナーレで選外佳作賞を受賞すると、ヨーロッパや南北アメリカでの発表を重ねる。2000年前後になると、ワインやアルコール飲料のボトルキャップの廃材を銅線で編み上げたタペストリー作品を用いたインスタレーションを展開。その後も、第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2007年)をはじめ、世界各地での発表が続いている。日本国内でも、複数の美術館を巡回した『インサイド・ストーリー 同時代のアフリカ美術展』(1995)や『大阪トリエンナーレ』(1995、1998)に参加。近年には、国立民俗学博物館(大阪)や神奈川県立近代美術館(ともに2010)などを巡回する大規模な個展を開催している。
今回、現代のアフリカ系アーティストの国際的な認知への多大なる貢献や、国際的な現代美術の場に作品を通じてアフリカの芸術的、文化的伝統を表明してきた実績が評価されての受賞となった。また、近年の国際的な成功のみならず、西アフリカの同世代および後続世代への影響、アーティスト、指導者としての持続的な活動も受賞の一因となっている。


Susanne Ghez

スザンヌ・ゲッツは1937年マサチューセッツ州ノース・アトルボロ生まれ。1974年のシカゴ大学のルネッサンスソサエティのディレクター就任以降、同機関を退職する2013年までの約40年間で160以上の展覧会を企画。70年代にはジョセフ・コスースやハンス・ハーケなどのコンセプチュアル・アート、80年代にはダニエル・ビュレンやルイーズ・ブルジョア、ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイスといった当時のヨーロッパ美術の先駆的存在のほか、ジェフ・ウォールやマイク・ケリーの美術館初個展、90年代にはフェリックス・ゴンザレス=トレスやイザ・ゲンツケン、トーマス・シュトルート、2000年以降もピエール・ユイグ、ジョーン・ジョナス、スティーヴ・マックイーン、フランシス・アリス、アラン・セクーラ、ポール・チャンなどの個展を企画している。また、1999年から2002年にはドクメンタ11の共同キュレーターを務めた。2013年以降は、アート・インスティテュート・オブ・シカゴのキュレーターとして活動している。
今回、約40年間務めたルネッサンスソサエティの現代美術における確固たる地位を築きあげ、その卓抜した分析眼、実験的、革新的な実践の重要性に対する信念で、アーティストやキュレーターらに影響を与え続けた功績が評価されての受賞となった。

ヴェネツィア・ビエンナーレhttp://www.labiennale.org/

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