2017年ハッセルブラッド国際写真賞


Rineke Dijkstra Rehearsals (2014) in Manifesta 10, 2014 Photo: ART iT

2017年3月2日、ハッセルブラッド財団は写真界に多大な功績を残した写真家やアーティストに贈られる2017年ハッセルブラッド国際写真賞を、現代写真におけるポートレイトの第一人者のひとりであるリネケ・ダイクストラに授賞すると発表した。ダイクストラには賞金100万スウェーデンクローナ(約1284万円)が与えられる。

リネケ・ダイクストラは1959年オランダ・リンブルフ州シッタート生まれ。アムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーで学び、現在も同地を拠点に活動している。相反する感情を抱えた出産直後の新生児を抱いた母親や試合を終えたばかりの闘牛士といった特殊な状況下の人々や、傷つきやすさや自意識の芽生えが共存する子どもから大人への移行時期にあるティーネイジャーなどを撮影対象に、一貫してアイデンティティの問題に取り組んでいる。17世紀オランダの肖像画を連想させるその肖像写真は、撮影対象の存在、撮影者と撮影対象との親密さを写し出すだけでなく、観客をもその関係性の中へと引き込んでいく。90年代後半以降は映像作品にも取り組んでおり、固定カメラで撮影した映像は、静止画と動画の流動的な境界線に対する理解に変化をもたらすものとして評価を受けている。

80年代中頃より本格的に作品の発表をはじめ、97年にニューヨーク近代美術館の『New Photography 13』に出品、第42回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展に参加。99年にはシティバンク・プライベートバンク写真賞(現・ドイツ証券取引所写真賞)を受賞。2001年には再びヴェネツィア・ビエンナーレ企画展に参加、アート・インスティテュート・オブ・シカゴで個展を開催。その後も世界各地の数多くの企画展、国際展に参加。2012年にはソロモン・R・グッゲンハイム美術館とサンフランシスコ近代美術館で大規模回顧展を開催。2013年にフランクフルト現代美術館で開催した個展『The Krazy House』は翌年にリバプール、ビルバオ、ワシントンへと巡回した。2014年のマニフェスタ10では映像インスタレーション「Rehearsals」を発表している。日本国内では2004年に水戸芸術館の『孤独な惑星−lonely planet』、2014年に森美術館の『ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界』に出品。2017年は、ハッセルブラッドセンターでの個展と同時期に、デンマーク・フムレベックのルイジアナ近代美術館で個展を開催する。


Rineke Dijkstra Rehearsals (2014) in Manifesta 10, 2014 Photo: ART iT

審査委員長を務めた元ヴィンタートゥール写真美術館館長のダンカン・フォーブス(ウエストミンスター大学近現代文化研究所客員研究員)は、ポートレイトのイメージが持つ複雑さを鮮やかに語るダイクストラの写真および映像作品を高く評価した。受賞者選考委員会はフォーブスを含む、ジェニファー・ブレッシング(ソロモン・R・グッゲンハイム美術館写真部門シニアキュレーター)、シモン・ンジャミ(キュレーター/ライター)、エスター・リュルフス(ハンブルク美術工芸博物館写真・ニューメディア部門長)、マーク・シーリー(オートグラフABPキュレーター兼ディレクター)の5名が務めた。

ハッセルブラッド国際写真賞は1980年に、ヴィクター・ハッセルブラッドの遺言を受けて、優れた写真家の写真表現における先駆的な実験や後続世代にもたらした影響といった業績を讃えるために創設された。(エルナ・ハッセルブラッドが他界した83年のみ不開催)なお、授賞式は10月9日、受賞記念のシンポジウムは受賞記念展初日の10月10日に、ヨーテボリのハッセルブラッドセンターで開催。同日に作品集の刊行も予定されている。

ハッセルブラッド財団http://www.hasselbladfoundation.org/


過去10年の受賞者
2016年|スタン・ダグラス
2015年|ヴォルフガング・ティルマンス
2014年|石内都
2013年|ジョアン・フォンクベルタ
2012年|ポール・グラハム
2011年|ワリッド・ラード
2010年|ソフィ・カル
2009年|ロバート・アダムス
2008年|グラシエラ・イトゥルビーデ
2007年|ナン・ゴールディン

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