第43回木村伊兵衛写真賞


小松浩子、「人格的自律処理」ギャラリーαMでの展示

 

2018年3月18日、朝日新聞出版は第43回木村伊兵衛写真賞の受賞者に、小松浩子と藤岡亜弥のふたりを選出した。授賞式は4月24日に東京・一ツ橋の如水会館で行ない、小松と藤岡にはそれぞれ賞状、賞牌および賞金50万円が授与される。

小松浩子は1969年神奈川県生まれ。受賞対象は光田ゆりのキュレーションの下で開催されたギャラリーαMでの個展『鏡と穴-彫刻と写真の界面 vol.4 小松浩子』の展示「人格的自律処理」と、ボローニャのMAST財団で開かれた企画展『THE POWER OF IMAGES』に出品した「The Wall, from 生体衛生保全, 2015」。小松は、2009年にギャラリー山口で初個展『チタンの心』を開催以来、東京を中心に作品の発表を重ねる。また、2010年から11年にかけて、自主ギャラリー「ブロイラースペース」を運営。2015年にドイツ・マンハイムで開かれた第6回フォトフェスティバルに出品した「生体衛生保全」が上述したMAST財団の企画展に出品された。また、『鏡と穴-彫刻と写真の界面 vol.4 小松浩子』は、写真家の原美樹子がArtforum(2017年12月号)の企画「THE ARTISTS’ ARTISTS」で2017年最も記憶に残った展覧会として挙げている。

藤岡亜弥は1972年広島県生まれ。受賞対象は原爆投下から70年以上の時間が経過した出身地・広島を撮影したスナップ写真をまとめた写真集『川はゆく』(赤々舍)と、昨年5月にガーディアン・ガーデンで開催した個展『アヤ子、形而上学的研究』。藤岡は2008年に文化庁の新進芸術家海外研修員としてニューヨークに滞在し、2012年に帰国。これまでに『さよならを教えて』(ビジュアルアーツ、2004)、『私は眠らない』(赤々舍、2009)を写真集として発表しており、『川はゆく』は自身3冊目の写真集。2010年には日本写真協会新人賞、2016年には伊奈信男賞を受賞している。『アヤ子、形而上学的研究』では、国内外各地で撮影してきた異なるシリーズの写真を新たな視点で選び直し、展示空間に再構成した。

 


藤岡亜弥、写真集『川はゆく』から

 

同時受賞となった小松と藤岡のほか、片山真理、笹岡啓子、春木麻衣子、細倉真弓が最終選考に残っていた。アサヒカメラ編集長の佐々木広人は、ノミネート作家6人全員が女性だったことに驚きの声が上がったが、そこに驚きを感じるべきではなく、むしろ、審査員を悩ませた「昨今の写真家の作品展示・発表の在り方」に注目してほしいと選考にあたってのコメントを寄せた。

朝日新聞社と朝日新聞出版が共催する木村伊兵衛写真賞は、1975年に故・木村伊兵衛の業績を記念して創設された。選考は写真関係者のアンケートにより推薦された候補者のなかから、選考委員会で受賞者を決定する。本年度の選考委員は写真家の石内都、鈴木理策、ホンマタカシ、作家の平野啓一郎の4人が務めた。受賞作品展は、ニコンプラザ新宿(4月24日〜5月7日)、ニコンプラザ大阪(6月14日〜6月20日)で開催される。

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