第11回ベネッセ賞

2017年1月12日、株式会社ベネッセホールディングスとシンガポール美術館は、「第11回ベネッセ賞」のタイ出身のパナパン・ヨドマニーへの授賞を発表した。パナパンにはベネッセアートサイト直島での作品制作の機会と、賞金300万円(ベネッセアートサイト直島への招待を含む)が授与される。なお、初のアジア開催にあたり、「福武總一郎特別賞」のシンガポール出身のズルキフリ・マハムードへの授与も合わせて発表された。

発足20年の節目を迎えたベネッセ賞は、ヴェネツィアからアジアへと拠点を移し、シンガポール・ビエンナーレ2016参加アーティストを対象に審査が実施され、昨年の同展覧会オープニングでは一次審査選抜者として、パナパンのほか、マルタ・アティエンサ、アデ・ダルマワン、チゥ・ジージェ、ブイ・コン・カーンの名前が発表されていた。

パナパン・ヨドマニーは1988年ナコーンシータンマラート(タイ)生まれ。現在はバンコクを拠点に活動している。仏教の教えと人々の生活の関連性に着目し、喪失、苦しみ、破壊、生と死の輪廻などといった普遍的なテーマに取り組んでいる。タイの伝統的なデザインやモチーフを取り入れ、自然に存在する素材や現代生活から生み出されるファウンド・オブジェなどを組み合わせた作品を制作している。タイ国内を中心に2000年代中頃より作品の発表をはじめ、タイ若手アーティスト賞(2006、2007)やタイ伝統絵画賞(2013)など数多くの受賞歴を誇る。2015年にはサーチ・ギャラリーやバンコクアート・カルチャー・センターで開催された『Thailand Eye』で作品を発表している。

審査員代表の三木あき子(ベネッセアートサイト直島 インターナショナル・アーティスティック・ディレクター、横浜トリエンナーレ 2017 コ・ディレクター)は、パナパンの受賞に「絵画的・彫刻的・建築的でもある彼女の作品は、仏教コスモロジーとミクロ・マクロのヴィジョン、伝統・近代的な技術、自然・人工素材が混在し、驚くような独自の風景を創り出しています。彼女の批評的な感性が、瀬戸内海の島で、人間文明や自然条件、現代における精神性等についていかなる深遠な洞察を生み出すのか、期待が高まります」とのコメントを寄せた。国際審査員は三木のほか、ルッカーナ・クナーウィチャヤーノン(バンコク芸術文化センター・ディレクター)、南條史生(森美術館館長)、スハーニャ・ラフェル(M+館長)、スージー・リンガム(シンガポール・ビエンナーレ2016クリエイティブ・ディレクター)が務めた。

ベネッセ賞は1995年、第46回ヴェネツィア・ビエンナーレの一環として、国際交流基金と福武学術文化振興財団(2012年より公益財団法人福武財団)が共催し、株式会社ベネッセホールディングスが支援した展覧会『トランスカルチャー』に合わせて実施された。以来、ヴェネツィア・ビエンナーレとの共催で実施されていた。

ベネッセアートサイト直島http://benesse-artsite.jp/

歴代受賞者
第1回(1995)|蔡國強
第2回(1997)|アレキサンドロス・プシフゥーリス
第3回(1999)|オラファー・エリアソン
第4回(2001)|ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー
第5回(2003)|リクリット・ティラヴァーニャ
第6回(2005)|タシタ・ディーン
第7回(2007)|アデル・アブデスメッド
第8回(2009)|ハンス=ペーター・フェルドマン
第9回(2011)|アドリアン・ヴィシャール・ロハス
第10回(2013)|アンリ・サラ

アーティスト名のカタカナ表記は主催者資料に基づく。

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