香港で『ART HK 11』がスタート

2011年5月26日、アジアで最も注目されるアートフェア『ART HK 11』が始まった。質および規模において世界一とされるアートフェア『アート・バーゼル』を運営するMCHグループによる過半数の株の取得が行なわれ、来る7月1日より同グループの傘下に入ることもあり、第4回目となる今回の『ART HK 11』は、その集客およびセールスに注目が集まっている。買収自体は5月6日に発表されたものの、以前より関係者内で噂になっていたことや、前回のフェアにおけるセールスが全体的に好調だったことから、今回はマリアン・グッドマン・ギャラリー、グラッドストーン・ギャラリー、セイディ・コールズHQ、シュプルース&マーゲルスなどのアート・バーゼルの常連である有力ギャラリーが初参加。全部で31ヶ国から168ギャラリーと、前回の29ヶ国155ギャラリーから参加ギャラリー数を伸ばしている。

初日に先立つ25日に行なわれたVIP対象のプレビューにおいて、今回初参加のデイヴィット・ツヴィルナーは、リュック・タイマンスの「The Couple」(2011)が110万USドル(約9000万円)、厳培明(ヤンペイ・ミン)の「Selfportrait」が42万USドル(約3400万円)などの売却を決めているとのこと。同じく初参加のシュプルース&マーゲルスもアンドレア・グルスキーの「Ferrari II」(2007)をヨーロッパ人のコレクターに50万ユーロ(約5800万円)で売却。昨年に続いて全体的に販売は好調の様子である。

日本からはアラタニウラノ、オオタファインアーツ、ギャラリー・サイド2、小山登美男ギャラリー、シュウゴアーツ、スカイ・ザ・バスハウス、タケニナガワ、ナンヅカアンダーグラウンド、ミヅマアートギャラリー、山本現代、レントゲンヴェルケ他が参加している。

次回の『ART HK 12』は、開催時期を2月に移す。これは毎年6月に行なわれるアート・バーゼルと12月に行なわれるアート・バーゼル・マイアミの時期を考慮しての時期選択であろう。アートフェアの開催を巡っては、毎年10月にロンドンで行なわれているフリーズ・アートフェアが来年5月にニューヨークでの開催も決めるなど、世界的に拡大している。その一方で、ART HKが2月に移ることにより、従来毎年3月にニューヨークで行なわれてきたアーモリー・ショーは確実に余波を受けることが予想される。

2011年1月にスタートした、シンガポールのアートフェア『アート・ステージ・シンガポール』は商業的にも質的にもART HKには及ばないが、官民一体で文化政策に力を入れ始め、各種の優遇政策をスピーディーに導入するシンガポールだけに、今後の戦略的な動きが注目される。

香港は2015年に西九文化区に複合文化施設のミュージアム・プラス(通称M+)がオープン予定で、シンガポール同様、アジアの文化中心都市を目指しており、国際的にも重要なアートフェアが定着することで相乗効果が期待される。

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香港国際アートフェア 2010(2010/06/07)

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