第12回光州ビエンナーレ、キュレーター陣を発表

光州ビエンナーレ財団は、9月に総合テーマ「Imagined Borders」発表した第12回光州ビエンナーレに参加する11名のキュレーター陣を発表した。

総合テーマの「Imagined Borders」は、大きな物語や単一作者性の限界を受け入れた変化と不確実性の時代と、多声や多視点が持つ複雑さへの回帰の必要性に応答するものとして、第1回光州ビエンナーレのテーマ「Beyond Borders」と、ベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体:ナショナリズムの起源と流行』を参照して設けられた。単独キュレーター制をとらず、11名のキュレーター陣が、光州という都市の歴史性や空間が持つ意味に焦点を合わせ、光州ビエンナーレの23年間の蓄積された経験を生かしつつ、人類の過去や現在に思いを巡らせ、未来のためのオルタナティブを探っていくための多角的な展覧会の構成を目指す。

テートのアフリカ、アジア、中東地域のアートの調査収集を担当するシニア・キュレーター、クララ・キムは、過去が現在を規定するという立場から出発し、20世紀中頃にさまざまな地域や文脈の下で展開したモダニズム、建築、国家建設の交点を掘り下げる。チェンマイにあるジム・トンプソン・アートセンターのアーティスティックディレクターを務めるクリッティヤー・カーウィーウォンは、国境紛争から生まれる物語や、東南アジアの植民地時代から現在に至るまでの移民の集団移動のパターンに踏み込んだ企画に取り組む。ロサンゼルス・カウンティ美術館[LACMA]のリタ・ゴンザレスクリスティン・キムは、参加の政治学、権力、情報格差、反インターネットの美学、現在も進化し続けるポスト・インターネットの条件において、インターネットへのアクセスが常に脅かされている世界やインターネットのない世界の分析などを扱う企画、ソウルの弘益大学校准教授のヨン・シム・チョンと香港大学准教授のイーワン・クーンは、日常生活の一部として介在したり、脚色されたり、逸脱している日常的な境界の数々に目を向けた展示を計画している。

マンソク・キムソンウ・キムジョンオク・ペクの韓国を拠点とするキュレーター3人は、韓国現代美術から見えてくる、個人/マルチチュードの心理学的な境界、集合と離散の論理と集会(アッセンブリ)の場所と非場所、人間と自然の共存における均整のとれた想像力という、境界をめぐる3つのコンセプトに焦点を当てる。アーティストでジョージタウン大学教授のムン・ボム・ガンは、北朝鮮美術を題材に社会主義リアリズムと自立した美術という西洋的な概念の美学的な境界の限界を再考し、ライター兼キュレーターのデイヴィッド・テは、今回のビエンナーレとの対話による過去のビエンナーレの再活性化を意図した一連の「回帰(returns)」を通じて、光州ビエンナーレ自体の歴史に取り組んでいく。

第12回展では、歴史性/現実性、経験/抽象、虚構/超越といった想像の境界線に多角的なアプローチをみせるこれら7つの展示が、光州ビエンナーレホールや国立アジア文化殿堂(ACC)のほか、歴史的背景を持つ場所を舞台に展開することとなる。

アジア地域を代表する国際展のひとつとして知られる光州ビエンナーレは、1995年、5.18光州民主化運動の精神を受け継ぎ、文化的な新しい価値を国際的に発信していく現代美術の場として設立された。2000年代後半には、オクウィ・エンヴェゾーやマッシミリアーノ・ジオーニといった、後にヴェネツィア・ビエンナーレの企画展を手がけることになったキュレーターをアーティスティックディレクターに抜擢。2012年にはアジア地域を拠点とする6名のキュレーターによる共同キュレーションを試み、前々回はジェシカ・モーガン、前回はマリア・リンドを登用している。

2014年、20周年記念として開かれた特別プロジェクトで、ホン・ソンダム(洪成潭)が描いた、当時現職だったパク・クネ前大統領を風刺した絵画の展示許可が下りないという出来事が起こり、光州ビエンナーレ財団理事長のイ・ヨンウが辞任することとなった。また、韓国ではパク・クネ前政権下において、政権に批判的な文化・美術界関係者や団体の「ブラックリスト」が作成、管理されていたことが政権交代後に発覚した。2017年7月、空白のままだった光州ビエンナーレ財団理事長の座に、アートソンジェセンターの元ディレクターのキム・ソンジョンが就任。キムはこれまでにヴェネツィア・ビエンナーレ韓国館のコミッショナー、メディアシティ・ソウルのアーティスティックディレクターなどを歴任し、現在は北朝鮮と韓国の非武装中立地帯に関するReal DMZプロジェクトにも取り組んでいる。また、2012年の第9回光州ビエンナーレでは、片岡真実やキャロル・インファ・ルーらと共同キュレーションを手がけた。

 

光州ビエンナーレhttp://gwangjubiennale.org/

第12回光州ビエンナーレ
2018年9月7日(金)-11月11日(日)
光州ビエンナーレホール、国立アジア文化殿堂(ACC)、ほか

 

 


 


過去のテーマとキュレーター

2016年(第11回)「The Eighth Climate (What does art do?)」
マリア・リンド

2014年(第10回)「Burning Down The House」
ジェシカ・モーガン

2012年(第9回)「ROUNDTABLE」
ナンシー・アダジャニア、ワッサン・アル=クダイリ、片岡真実、キム・ソンジョン、キャロル・インファ・ルー、アリア・スワスティカ

2010年(第8回)「10,000 LIVES」
マッシミリアーノ・ジオーニ

2008年(第7回)「On the Road / Position Papers / Insertions」
オクウィ・エンヴェゾー(共同キュレーター:キム・ヒュンジン、ランジット・ホスコテ)

2006年(第6回)「Fever Variations」
キム・ホンヒ(チーフ・キュレーター:ウー・ホン、チーフ・プログラマー:キム・サンユン)

2004年(第5回)「A Grain of Dust A Drop of Water」
イ・ヨンウ(共同キュレーター:ケリー・ブロアー、チャン・ソクウォン)

2002年(第4回)「P_A_U_S_E」
共同キュレーター:チャールズ・エッシュ、ホウ・ハンルゥ、ソン・ワンギョン

2000年(第3回)「Man and Space」
キュレーター:オ・グァンス

1997年(第2回)「Unmapping the Earth」
イ・ヨンチュル

1995年(第1回)「Beyond Borders」
イ・ヨンウ

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