日産アートアワード2017、ファイナリスト

2017年6月19日、日産自動車株式会社は「日産アートアワード2017」のファイナリストに、石川竜一、題府基之、田村友一郎、藤井光、横山奈美を選出したと発表した。ファイナリスト5名の新作が出品される最終選考を兼ねた展覧会は、今年9月に横浜のBankART Studio NYKで開催される。

先月、日産自動車会長のカルロス・ゴーン同席のもと、ニューヨークで開かれた第一次選考では、候補者推薦委員が過去2年間の活動を参考に選出した25名のアーティストの中から、森美術館館長の南條史生を審査委員長とする国際審査委員会が書類審査を通じて上述の5名をファイナリストに決定した。国際審査委員のジャン・ド・ロワジー(パレ・ド・トーキョー館長)は「選考過程では、今の日本における創造の現場で何が起こっているかを発見することができた。抗う事に貪欲で、賢明、あるいは極めて詩的、物語性に富んだファイナリストの多様な内面世界が、現代日本の新たな表現や深淵を見せてくれるだろう」と第一次選考を振り返る。同じく国際審査委員のジェシカ・モーガン(DIA美術財団館長)は「現代アーティストが素晴らしいのは、常に予測不可能なところ。ファイナリストが9月の展覧会に向けてどのような作品を制作するのかとても楽しみだ」と最終選考への期待を語った。

日産アートアワードは2013年に創業80周年を迎えた日本自動車株式会社が「人々の生活を豊かに」というビジョンのもとに設立された。同賞の継続と作品の蒐集を通じて、国際的なアートシーンにおける日本現代美術の参照点となることを目指している。ファイナリストには賞金100万円と作品制作費100万円が支給され、グランプリ受賞者には賞金300万円(ファイナリストの賞金100万円を含む)と、海外レジデンスの機会(今回はニューヨークのインターナショナル・スタジオ&キュラトリアルプログラム[ISCP])が与えられる。

日産アートアワード
http://www.nissan-global.com/JP/CITIZENSHIP/NAA/

日産アートアワード2017
2017年9月16日(土)-11月5日(日)
会場:BankART Studio NYK 2F


石川竜一「NAHA, 2013」2013年

石川竜一(1984年沖縄県生まれ):生まれ育った沖縄をポートレート的視点で捉えた写真で2015年に第40回木村伊兵衛写真賞と2015年日本写真協会賞新人賞を受賞。昨年は横浜市民ギャラリーあざみ野で個展『考えたときには、もう目の前にはない』をはじめ、『六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声』(森美術館)や『BODY/PLAY/POLYTICS』(横浜美術館)といった美術館規模の企画展などで作品を発表している。そのほか、写真集『okinawan portraits 2012-2016』(赤々舎)も出版。


題府基之「Still Life」2013年

題府基之(1985年東京都生まれ):自身の身のまわりの事柄を主題とした日常と非日常を行き来するような、ユーモアと皮肉に満ちた俯瞰的写真イメージを国内外で発表している。2013年に国際写真賞「Prix Pictet」にノミネートされ、同賞の展覧会がヴィクトリア&アルバート美術館などを巡回。昨年は個展『題府基之展「何事もない穏やかな日です。」』(ガーディアン・ガーデン)を開催。サンフランシスコ近代美術館で開催された『Japanese Photography from Postwar to Now』にも出品。


田村友一郎「裏切りの海」2016年

田村友一郎(1977年富山県生まれ):既存のイメージや自ら撮影した素材をサンプリングの手法のもとに使用し、独自の関係性を導き出し再構成することで時空を超えた新たな風景や物語を立ち上げる。昨年は愛知県美術館オリジナル映像作品として「アポロンの背中」を発表し、『BODY/PLAY/POLYTICS』(横浜美術館)やKYOTO EXPERIMENT2016に参加。今年に入っても、『2 or 3 Tigers』(Haus der Kulturen der Welt、ベルリン)や『Mode of Liaison』(BACC バンコクアートセンター)に出品。ユカ・ツルノ・ギャラリーで個展『G』を開催するなど、精力的な活動を見せている。


藤井光「帝国の教育制度」2016年

藤井光(1976年東京都生まれ):映像メディアを中心にアーカイブ資料などを取り上げ、社会の事象、歴史や記憶、関係性を再解釈し、未来に向けた新たな展望を提示する作品を制作している。作品形態はインスタレーションや映像のみならず、ワークショップ、ドキュメンタリー映像制作、演劇/映画作品の演出とテキストの執筆など幅広い。近年の主な展示に、ゲストディレクターを務めた『歴史の構築は無名のものたちの記憶に捧げられる』(国際芸術センター青森、2015)や『MOTアニュアル2016 キセイノセイキ』(東京都現代美術館、2016)などがある。


横山奈美「最初の物体」2016年 撮影:怡土鉄夫

横山奈美(1986年岐阜県生まれ):油彩で静物画という伝統的な方法を用いて、フライドチキンの骨、使用済みのテレフォンカード、トイレットペーパーの芯など、生活の中にひっそりと存在する些細な物をモチーフに描いた作品で知られる。これまでに第19回岡本太郎現代芸術賞やVOCA展2015に入選し、昨年は第8回絹谷幸二賞 奨励賞を受賞。昨年はケンジタキギャラリーで個展『やり直し』を開催。2014年には『手探りのリアリズム』(豊田市美術館)に出品している。

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