オードリー・イルマス賞2017

2017年4月3日、バードカレッジ・センター・フォー・キュレトリアル・スタディーズ(以下、CCS Bard)主催のオードリー・イルマス賞の授賞式典がニューヨーク市内で行なわれた。展覧会制作の発展に貢献したキュレーターの功績を讃える同賞の2017年の受賞者は、前テート・ディレクターで現在はアーツカウンシル・イングランド会長を務めるニコラス・セロータ。セロータには賞金25,000ドル(約276万円)が授与された。

ニコラス・セロータ(1946年ロンドン生まれ)は、88年から2017年まで30年近くにわたり、テートのディレクターを務めた。セロータの就任期間に、テート・セント・アイヴスの開館(1993)、テート・モダンの開館と改修(2000、2016)、テート・モダン開館によるテート・ブリテンの改修(2000)に着手。コレクション面においても、写真や映画、パフォーマンス、建築を加え、対象地域をラテンアメリカ、アジア、中東、アフリカへと拡張していった。とりわけ、テート・モダンの活動は国際的に現代美術をとりまく環境が大きく変化する中で先駆的な役割を担ってきたと言えるだろう。また、2010年以降はイギリスおよび北部アイルランドの35の美術機関との連携を深め、テートの国を代表する美術機関としての役割を強化してきた。近年の共同企画には、ドナルド・ジャッド、ハワード・ホジキン、サイ・トゥオンブリー、ゲルハルト・リヒター、マティスの個展などがある。

セロータは、ケンブリッジ大学で経済学を専攻したのち、美術史に転向。ロンドン大学コートールド美術研究所にて、J.W.ターナーの研究で修士号を取得。英国アーツカウンシル勤務を経て、73年にオックスフォード近代美術館ディレクターに就任。その後、76年からテートに移る88年まで、ホワイトチャペル・アートギャラリーのディレクターとして、ロバート・ライマン、カール・アンドレ、ゲルハルト・リヒター、エヴァ・ヘス、マックス・ベックマン、アンゼルム・キーファー、フィリップ・グストン、ゲオルグ・バゼリッツ、ブルース・ナウマンの個展などを実現。テートのディレクター就任以降も、ブリティッシュ・カウンシルの視覚芸術諮問委員や会長、英国建築財団役員、ロンドン・オリンピック実行委員会、BBC執行委員会の非業務執行取締役などを歴任している。

CCS Bardエグゼクティブ・ディレクターのトム・エクルズは、「ニコラス・セロータは世界の美術や美術館における重大な人物である。キュレーターおよびディレクターとして、彼は現代美術やアーティストを擁護し、イギリスにおいてはなによりも、たゆまぬ努力によって、テートを現在の最も優れた美術機関へと押し上げた」と、その生涯にわたる功績を讃えた。

20回目の開催となったオードリー・イルマス賞は、現代美術の研究やキュラトリアル・スタディーズにおける世界有数の研究機関として知られるCCS Bardが1998年に設立。2012年より、CCS Bardボードメンバーのオードリー・イルマスの名を冠している。

CCS Bard Award for Curatorial Excellence
http://www.bard.edu/ccs/visit/about-ccs-bard/award-for-curatorial-excellence/


歴代受賞者
2016|テルマ・ゴールデン
2015|クリスティン・トーメ、マーサ・ウィルソン
2014|チャールズ・エッシュ
2013|エリザベス・サスマン
2012|アン・ゴールドスタイン
2011|ヘレン・モールスワース、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト
2010|ルーシー・リッパード
2009|オクウィ・エンヴェゾー
2008|カトリーヌ・ダヴィッド
2007|アラナ・ハイス
2006|リン・クック、ワシフ・コルトゥン
2005|キャシー・ハルブライヒ、マリ・カルメン・ラミレス
2004|ウォルター・ホップス
2003|キナストン・マクシャイン
2002|スザンヌ・ゲッツ
2001|ポール・シンメル
2000|カスパー・ケーニヒ
1999|マルシア・タッカー
1998|ハラルド・ゼーマン

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