第3回恵比寿映像祭 デイドリーム ビリーバー !! – 映像の力

『第3回恵比寿映像祭 デイドリーム ビリーバー !! – 映像の力』
2011年2月18日 – 2月27日
東京都写真美術館 他
http://www.yebizo.com


ハヴィア・テレーズ 「カリガリ博士と眠り男」 (2008年)
スーパー16ミリフィルム、HDV(ブルーレイ)に変換、サウンド、白黒
作家蔵 協力:ガレリー・ペーター・キルヒマン、チューリッヒ
Javier TELLEZ, Caligari and the Sleepwalker (2008)
Super 16mm film transferred to HDV Blue-ray, sound, b&w,
Collection of the artist, Courtesy the artist & Galerie Peter Kilchmann, Zurich

『恵比寿映像祭』は映像領域と芸術領域を横断するフェスティバルとして、東京都写真美術館で2009年より始まり今年で3回目を迎えた。「デイドリーム ビリーバー!! – 映像の力」のテーマが設けられた今回は、映像が生みだすさまざまな夢の側面をあらわにしている。

東京都写真美術館の空間を熟知するディレクター岡村恵子による展示は、写真美術館の空間の難点をカバーし、メディアをうまく選択して配置することで、映像展が陥りがちな映像作品の連続で観客を疲弊させてしまうことから上手く逃れることに成功していた。
またストーリー作りにおいても、夢と現実の往来、アニメーションを制作する作家における作品との距離感、フィクションとドキュメンタリー、夢と精神分析、サイバー社会、といった夢にかかわるキーワードが見え隠れし、多角的な視点を盛り込んでいた。
黒坂圭太、ヤン・シュヴァンクマイエル、ローレンス・ジョーダン、松本力など、アニメーションにまつわるセクションには領域横断的な試みを見ることができ、また、ハヴィア・テレーズの「カリガリ博士と眠り男」(2008)は現実と夢との行き来の面からもフィクションとドキュメンタリーという面からも魅力的な作品であった。

一方で、限られたスペース故に要素が多すぎたようにも思えた。各作品のクオリティは高いにもかかわらず、一見して作品の背景を作品のみで理解することが難しくなってしまった。故に作品解説ーー優れた作品解説であるけれどもーーに頼る鑑賞方法をとらざるを得ない。作品同士の共通項の歩幅をもう少し狭めることで、各作品への理解がより密になったのではないかと思う。

また、見たことのある作品の多さも気になった。昨年のシドニー・ビエンナーレや光州ビエンナーレ、さらには海外のアートフェアや同時期に近くで行なわれていた展覧会で見た作品などが複数あり、作品数がそれほど多くない展覧会にしてはその割合が多いように感じた。毎年、この規模を行なうために調査対象が限られるのは理解できるが、どこから作品を選んだか言い当てられるほどでは問題があろう。

上映プログラムでは、実験的アニメーションの特集上映、ハルン・ファロッキ特集、ジュン・ヤン/ツァオ・フェイ特集といった実験映画ファンや現代美術ファンにうけるものから、シュヴァンクマイエルや石橋義正の新作など一般客の興味も惹く作品まで広くカバーしている。

こうした広い観客層を意識した展示と上映の双方の形式を持つ恵比寿映像祭は、総合テーマ「オルタナティヴ・ヴィジョンズ」のコンセプトやステイトメントなど、出発点としては非常に好企画であり、構成の巧さや上映プログラムとの相乗効果も併せて国際的なレベルまで踏み込める潜在力がある。そうした潜在的な可能性に期待があるが故に、特に展示に対しては苦言続きとなってしまった。次回の開催に向けてこういった点が改善されることを強く望む。

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