FURUKAWA's Blog
Yumiko Furukawa | 古川弓子
underground stem (9)
それ以来、わたしはずっと浴室に入らないように努めました。
浴室の扉の先には、彼らが横たわり、生死との狭間で、もがいているのだろう。想像は簡単でした。
彼らは、しかしながら、自分の匂いが強くなっていることが気になり、気分も悪く、咳が出るようになってきたので、そろそろ、彼らの身体を浴槽からどかして、わたしが入浴しなくてはいけないと、思うようになりました。恐る恐る浴室へ近づき、思い切って、バタンと扉を開けました。
浴槽には、くたびれて、腐りきった、花たちが、横たわっていました。花びらと、その他の部分の区別が付けられないほど、わけのわからない、ただ、茶褐色した繊維だけになっていました。
そして、わたしが花たちのために溜めた浴槽の水は、幾分か分量が減り、黄緑色の毒薬のように深く濃い色をしていました。わたしは、彼らはまた、ここでも死んでしまった、ということに気づきました。
彼らの顔面だったであろうと思われる箇所を、じっと見つめました。その部分には、白く、今にでも上昇気流にのって飛び立っていきそうな、綿毛が生えておりました。
わたしは、その綿毛をひとつまみして引っ張りました。すると、綿毛の下には細長い種がついていました。わたしは今になって気づきました。植物の末端の世界しか知らなかったのです。わたしは彼らが今、種になろうとしていたことに気づいていませんでした。種になろうとして、捨ててしまう花びらだけを、今までずうっと見つめていたにすぎなかったのだと、気づきました。
わたしは、自分がただ勘違いしていたことを、恥ずかしくなりました。彼らは死んでいなかったのです。複数の種に変わっただけなのです。
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