大竹伸朗 『NOTES 1985-1987』 DVDキャプチャー

2010年7月9日

©大竹伸朗


“時間膜”にみる
画家・大竹伸朗の眼
text=MASARU HATANAKA

 1985〜87年までの大竹伸朗の3年間の日々を収めた8mm映像と、当時の作品制作ノートが合体した『NOTES 1985-1987』が発表される。この3年間は大竹にとってどんな意味を持つのか。
 「活動拠点が東京から宇和島に移り、移動も多く、制作場所や日常において個人的に節目となる出来事がこの時期と重なっている。当時、貼り込み系制作ノートを常に携帯していたのは、実現しようがしまいが関係なく、考える事が一番重要な仕事だと強く思っていたからだし、“対”になった映像は、10代で経験した北海道の別海やその後のロンドンでの日々同様、作品云々とは関係なく自分だけの“時間”を自分なりの方法で記録したいといった思いの結果だろう。そして、無意識のうちに、できるかぎり移動し続け、異文化に触れることで自分の内側に“創作層”のようなものを積み上げていった時期だったのかもしれない」。場所の隔たりは“異質な時間の流れ”に過ぎず、日本もロンドンも一見区別のつかない独特の湿り気を帯びた光景に感じられる。
 奇しくも、「iPad元年」。紙媒体の崩壊が脅かされる中、大竹は敢えて真っ向から時代に逆行する、アナログな映像と印刷物にこだわった。
 「便利と復讐は表裏一体だとずっと思ってきた。保存しておいて後からチェックするといったコンピュータによる制作過程があまり好みではない。手元を再確認するという意味で、自分自身、人の手で作り出すものにしか反射的に興味が湧かないといったことを改めて認識した」
 意識としての「制作ノート」と無意識としての「サイレント映像」、相対する記憶の形が合体してはじめて、既存の情報形式の中で埋もれてしまっていた、我々の原始的な脳神経が機能しはじめるのだ。それが、“今”を感じるということなのではないか。


『大竹伸朗 NOTES 1985-1987』
2010年/¥12,600/ジェイ・ブイ・ディ