紡がれた言葉―ソフィ カルとミランダ ジュライ [ARC]

紡がれた言葉―ソフィ カルとミランダ ジュライ/原美術館コレクション展
3月16日[土]-6月26日[水]
ハラ ミュージアム アーク(群馬県渋川市)

フランスを代表するアーティストであり、原美術館(東京都品川区)でこの春、2度目の個展を開催するソフィ カル。 自作の映画最新作『ザ・フューチャー』が現在日本公開中で、アメリカ新世代のアートを牽引するミランダ ジュライ。
現代美術の枠組みを超え、その多様な表現領域で世界中から注目されるふたりの女性アーティストによる大型インスタレーション作品をご紹介します。

ソフィ カル「限局性激痛」より 1999年
© ADAGP Paris,2013 Courtesy Galerie Perrotin, Hong Kong & Paris – Gallery Koyanagi, Tokyo

テートギャラリー(ロンドン)をはじめとする各国の主要美術館での個展開催や、ヴェネツィアビエンナーレ(2007年)のフランス代表選出など、世界の第一線で走り続けるソフィ カル。写真と日本語のテキストによる『限局性激痛』は、1999年、原美術館での個展のために制作された作品です。カル自身が奨学金をもらって日本へ向かうためにパリを旅立ってからの日々を鮮やかに切り取った写真と、一文字ずつ繊細に刺繍された「心の痛み」を綴ったテキストは、丁寧に鑑賞者の心に届けられました。
一方、ミランダ ジュライは、美術家・映画監督・俳優・小説家などマルチに領域を横断する活動で近年脚光を浴びています。横浜トリエンナーレ(2008年)において、普遍的な生への内省を手書きで綴り、話題の的となったインスタレーション作品『廊下』は、作家自身の要請により、その後、原美術館のコレクションに加えられました。
言葉を紡ぎ、現実と虚構の間を往還しながら今と未来を見据えるふたりの女性アーティスト、その大型インスタレーション作品の競演は、またとない好機となるでしょう。
なお、本展と会期を重ね、原美術館において、「ソフィ カル 最後のとき/最初のとき」展を開催します。こちらは、失明した人々を取材し、写真とテキストで綴った『最後に見たもの』(2010年)と、初めて海を見る人々の表情を捉えた映像『海を見る』(2011年)の2部構成を予定しており、会期中、二館を結ぶシャトルバスの運行も計画されています。

ハラ ミュージアム アーク
展覧会名 紡がれた言葉―ソフィ カルとミランダ ジュライ/原美術館コレクション展
会期 2013年3月16日[土]-6月26日[水]  主催  原美術館
会場 ハラ ミュージアム アーク
開館時間 9:30am-4:30pm (入館は4:00pmまで)
休館日 木曜日(3月28日、5月2日は開館)
入館料 大人(中学生以上)1,000円  小人(3歳-小学生) 500円
ハラ ミュージアム アーク・グリーン牧場セット券 大人1,800円、小人900円
※GW期間中、セット券の販売は休止します。
70歳以上半額、 20名以上の団体割引、学校団体は別途料金規定あり ※小人は要保護者同伴
群馬県内の小中学生が学期中の土曜日に美術館を利用した場合は無料

アクセス
電車―JR上越・吾妻線「渋川駅」より(上越・長野新幹線利用の場合は高崎駅で上越線に乗り換え)伊香保温泉行きバスにて約15分、「グリーン牧場前」下車
車―関越自動車道「渋川伊香保インター」より伊香保温泉に向かって8㎞、約15分

ハラ ミュージアム アーク 群馬県渋川市金井2855-1
Tel 0279-24-6585   E-mail arc@haramuseum.or.jp
ウェブサイト http://www.haramuseum.or.jp
携帯サイト http://mobile.haramuseum.or.jp
ブログ https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum
ツイッター http://twitter.com/HaraMuseumARC

■日曜日(14:30より約1時間)、予約制にて学芸員によるギャラリーガイドおよび開架式収蔵庫(現代美術)の特別公開します(中学生以上対象)。 

【ソフィ カル 「限局性激痛」について】
人生最悪の日までの出来事を最愛の人への手紙と写真とで綴った第1部(カウントダウン)と、その不幸話を他人に語り、相手の最も辛い経験を聞くことで、少しずつ心の傷を癒していく第2部(カウントアップ)で構成される展示となります。第2部(カウントアップ)では、失恋の話、視力を失った話――数多くの話は、白い布に黒い糸で繊細に刺繍され、展示室の壁を覆いつくします。「限局性激痛」は、今から14年前、原美術館での個展で発表された作品です。自分の人生をさらけ出し、他人の人生に向き合うカルの制作に、多くの鑑賞者が心を打たれたに違いありません。しかし一方で、カルの作品には常に虚か実か判然としない曖昧さが漂い、全てを素直に信じることの危うさも問題にしています。

【ソフィ カルとは】
1953年フランス(パリ)生まれ。10代の終わりから7年間に及ぶ放浪生活を送り、26歳でパリに戻る。その頃より作品制作を始め、1980年に展覧会へ初出品した。主に写真と言葉で構成した物語性の高い作品で知られる。見知らぬ人々を自宅へ招き、自分のベッドで彼らが眠る様子を撮影したものにインタビューを加えた「眠る人々」(1979年)や、ヴェネツィアのホテルでメイドをしながら、宿泊客の部屋の様子を撮影した「ホテル」(1983年)、拾ったアドレス帳に載っていた人物にその持ち主についてのインタビューを行い、日刊紙リベラシオンに連載した「アドレス帳」(1983年)など、物議を醸す作品も多数発表している。90年代の「本当の話」や「ヴェネツィア組曲」なども含め、虚実入り混じる不思議な作品を制作する一方で、「盲目の人々」(1986年)から始まった盲人に焦点を当てたシリーズにおいて、美術の根幹に関わる視覚・認識についての深い考察を行っている。
ロンドンのテート ギャラリー(1998年)やパリのポンピドゥー センター(2003年)での個展の他、各国の主要美術館にて個展を開催。第52回ヴェネツィアビエンナーレ(2007年)展に出展するなど、今日のフランスを代表するアーティストの一人である。自叙伝的な作品シリーズのほか、アメリカの小説家、ポール オースターとの共作や、「ダブル・ブラインド」(監督・出演)などの映画製作も手がけ、その活動は現代美術の枠組みを超えて広く注目を集めている。
日本では、原美術館にて開催された「限局性激痛」(1999年)や豊田市美術館(2003年)での個展開催の他、「脱走する写真―11の新しい表現」(1990年、水戸芸術館現代美術ギャラリー)、「移行するイメージ:1980年代の映像表現」(1990年、京都国立近代美術館、東京国立近代美術館)などのグループ展にて紹介。現在、パリ近郊のマラコフ在住。

ミランダ ジュライ「廊下」2008年

【ミランダ ジュライ 作品『廊下』について】
・・・ウェブサイト「YOU OBVIOUSLY KNOW WHAT I’M TALKING ABOUT」より
http://mirandajuly.com/art
125フィートの廊下には、手書きのテキストが書かれた木製の50の標識が並んでいます。鑑賞者(参加者)は果てしなく続く廊下を標識から標識へと巡り歩き、テキストは内なる声のような響きを持ちます。「戻るにはもう遅すぎる、だが、終わりはまだまだ先のようだ…」テキストに出てくる「あなた(you)」は、これから残された人生をかけて、この廊下を歩いていくことに気づきます。そして人生と同じように、この廊下は優柔不断や失望、退屈や喜びに満ち溢れ、そしてそれはやがて終わるのです。 
標識のテキスト:英語は一方向に記され、日本語は別方向に記されています。

【ミランダ ジュライとは】
1974年米国バーモント州バリー生まれ。カリフォルニア州バークレー育ち。両親はともに作家で、出版社を営む。高校卒業後、カリフォルニア大学サンタクルーズ校に進学するが中退し、オレゴン州ポートランドに移ってパフォーマンス・アーティストとして活躍。1997年からは映画も開始し、脚本・監督・主演した長編映画『キミとボクの虹色の世界』(2005年)でサンダンス映画祭の審査員特別賞を受賞、カンヌ国際映画祭ではカメラドール(新人監督賞)を含む4部門を受賞、一躍脚光を浴びた。現在シアター・イメージフォーラム(東京・渋谷)にて公開中の映画最新作『ザ・フューチャー』は、その長編第2作であり、ベルリン国際映画祭(2011年)コンペ部門に出品された。
現代美術家としても、パフォーマンス、ウェブを使ったアート、サウンド(ヴォイス)アートなど多彩な表現活動を続け、ニューヨーク近代美術館、グッゲンハイム美術館、ヴェネツィアビエンナーレ、ホイットニービエンナーレ等で展観されている。アーティストのハレル・フィッチャ―と共同で参加型ウェブサイト『Learningtoloveyoumore』を立ち上げ、2007年に同サイトの書籍版(プレステル社)も刊行。作品は現在、サンフランシスコ現代美術館に所蔵されている。
日本では、2008年、横浜トリエンナーレへ『廊下』を出品し、大きな反響を呼んだ。2009年、ヴェネツィアビエンナーレのために制作したインタラクティブ・スカルプチャー・ガーデン『Eleven Heavy Things』は、その後ニューヨークのユニオンスクエアでも発表され、現在はロサンゼルス現代美術館に展示されている。
また一方で、2001年ごろから『パリス・レビュー』『ニューヨーカー』『ハーパーズ』等の雑誌に小説を発表しはじめる。初めての小説集となる短編小説集『いちばんここに似合う人』(2007年)はフランク・オコナー国際短編賞を受賞、20カ国で出版された。次作の『It Chooses You』が新潮社より近々邦訳(岸本佐知子訳)発行予定である。現在、ロサンゼルス在住。

【本展と連動したプログラム】
■展覧会 「ソフィ カル 最後のとき/最初のとき」
ソフィ カルが、「盲目の人々」以来、長年にわたって追究してきた視覚や認識に関する最新作、「最後に見たもの」「海を見る」の2作品を中心とした展覧会。原美術館の空間に合わせて再構成します。
会期 2013年3月20日[水]-6月30日[日]
会場 原美術館 (東京都品川区北品川4-7-25)

*会期中、東京からのバスツアーを予定しています。詳細は原美術館ウェブサイトなどで追ってお知らせします。http://www.haramuseum.or.jp

■「ショートフィルムズ・バイ・ミランダ・ジュライ」 
ミランダ ジュライによる短編映画(5作品)の上映会を原美術館にて開催。
本年1月に開催した際、記録的なスピードで満席となってしまった上映会を、ご好評にお応えし再演します。
http://www.haramuseum.or.jp

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