安藤正子展併催「原美術館コレクション展」解説[原美術館]

東京・原美術館より

8月19日[日]まで、原美術館の3つの展示室において「ハラドキュメンツ 9 安藤正子―おへその庭」を開催中です。同時に、2階奥の2部屋では、「原美術館コレクション展―あちらとこちら」展にて、所蔵作品の中から選んだ10作家による20作品を紹介しています。ここでは、担当学芸員がコレクション展示を簡単に解説いたします。


右より:加藤美佳「みんなのお墓」2006年、横尾忠則「DNF:暗夜光路 眠れない街」2001年、名和晃平「PixCell [skull]」2003年

「あちらとこちら」は、安藤正子の油彩画を観ている時に浮かんだ言葉であり、また「現実と非現実の間で絵になる瞬間を模索する」という、安藤が自作について語る言葉とも緩やかに繋がっている。安藤の描写は、リアルであるようでリアルでなく、リアルでないようでリアルだ。綿密な作業の末に平滑な絵肌に仕上げ、絵画の平面性を強調するが、観る者の視線は絵画の表面から奥へと吸い込まれ、現実(こちら)と非現実(あちら)の世界を際限なく行き来する。

「あちらとこちら」をキーワードに原美術館の収蔵品から選んだ作品は10作家の20作品。
エンリコ カステラーニの『白の表面』は、カンヴァスの裏から釘を打ち込むことでカンヴァス表面に凹凸をつけ、そこに生じる陰影を作品のイメージとしている。イメージはひとところに留まることなく、光のあり方によって、光と影との間で無限に変化する。

Y字路は、あちらとこちらの分かれ道の象徴だが、横尾忠則のY字路絵画には、二者択一ではなく、無数の選択肢、無数の次元に入りこむかのような気配が漂っている。

山本 糾の被写体は滝。滝は聖なるものとして精神修養の場ともなるが、山本は『落下する水』と題し、精神的な存在と物理的な現象の間で作品化している。展示された写真は、床面に映り込み、作家の意図から離れて、観る者の視線が虚と実とを行き来するものともなっている。

その他、佐伯洋江の絵と余白、ロバート メイプルソープの生と死など、様々な「あちら」と「こちら」を自由に彷徨っていただきたい。


右:山本糾「落下する水」(1988、94)、左:ルイザ ランブリ「無題(ブランリーブルシリーズ)」(1997)


手前:ロバート メイプルソープ「花」(1977、79、81)
撮影:米倉裕貴

展覧会名 原美術館コレクション展―あちらとこちら
出品作家 エンリコ カステラーニ、マルタ パン、ロバート メイプルソープ、佐伯洋江、加藤美佳、横尾忠則、名和晃平、米田知子、山本糾、ルイザ ランブリ(順不同)
会期2012年7月12日[木] – 8月19日[日]
会場 原美術館 (原美術館ギャラリーIV、V)
併催 ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭 (原美術館ギャラリーI、II、III)

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原美術館

「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭」
7月12日[木]―8月19日[日]

「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」
8月28日(火)-11月18日(日)

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